※「人ははじめに眠りにつく(後編)」の続編です
性描写は含みませんが、少し下品なのでご注意ください



人 は は じ め に 眠 り に つ く  /  続 篇


花冷えの風に煽られて、くしゅん、とエースが軽いくしゃみを落としたことを切欠に、マルコはエースの髪から手を離した。腫れものに触れるような扱いは(もともとしていなかったが)終いである。とんとんとエースの背中を叩いて、ゆっくりとエースの体を持ち上げると、結合部からどろりとマルコの精液が零れて、「あ」とエースが軽く声を漏らした。「もうちょっと、いいだろ」とエースは言ったが、「風邪引くよい」とマルコは返して、またマルコのシャツでエースを拭って、ついでにマルコのマルコも軽く拭いて、エースに下着とハーフパンツを履かせる。マルコ自身は前を寛げただけだから、チャックを上げてホックを閉じてしまえば元通りだった。あまり着る気にはならない湿ったシャツを、でもしかたがないので軽く羽織って、ボタンはそのままにしておく。服を着たエースは、ぺたんと地面に膝をついて落ちてくる花弁を捕まえようとしているので、「帰るよい」とマルコが促せば、「どこへ?」とエースは尋ねた。それはマルコも今考えている。このまま宿に帰れば、何をしてきたのかおそらく丸わかりだろうし、宿から親父に通じないとも限らない。けれども船に帰ったとしても、船番にはサッチがいるのだった。どちらにしても逃げられないマルコは、何気なく受け止めた花弁をエースに渡してやってから、「宿に」と告げる。どうせ逃げられないのなら、もう一度温泉に入りたかった。エースも洗わなくてはいけない。マルコが残した鬱血はごく軽いもので、おそらくエースなら一晩で消してしまえるだろうが、船に帰るのならその一晩ですら致命傷に近い。老木の脇に転がった重箱を丁寧に包み直して、ついでに酒瓶も括りつけて左手に持ったマルコは、右手をエースに差し出した。素直にマルコの手を取ったエースは、わずかに顔を顰めながら立ち上がって、「…またちょっと出た」と呟くので、「そう言うことは言わなくていいんだよい」とマルコは少しばかり赤くなる。エースにデリカシーがないのはいつものことだ。「でもせっかく飲んだのに」とむくれるエースの顔も随分赤くて、そう言えばこいつは酔っていたのだった、と思いだしたマルコは、「またいつでも飲ませてやるから今日は我慢しろい」と言って、エースの手を引いたまま歩き出す。マルコも大分酔っている。

来た道をそのまま戻るだけの工程に、やけに時間がかかるのはエースの歩みが遅いせいだ。かたかたと、宿の入口で借りた雪駄を鳴らして、マルコの手に体重を預けるエースの足取りは、ふわふわと掴みどころがない。「眠いのかい」と声を掛けたマルコに、「いや」と首を振るエースは、「ただもうちょっとこうしてたいなって思って」とあんまり柔らかく笑うものだから、マルコは頭を書こうとして、両手がふさがっていることに気づいて、結局ぎゅう、とエースの手を握る右手に力を込めた。「いてえよ?」とエースの声が不思議そうな色を孕むので、「そりゃ悪かったな」とマルコは言って、でも握力はそのままに「帰ったら、内風呂に入るよい」と告げる。「おう、一緒に」と笑うエースは随分楽しそうで、計画通りではあったがあまりわかっていないだろうエースが溺れないようにせいぜい気をつけよう、とマルコは思った。部屋の風呂は露天だったから、少しは酔いもさめるだろう、と、屋外にいる時点であまり覚めていないことには目を瞑って歩くマルコの視界には、やがて小さな明かりが見えて、ふっと息を吐く。さすがに手を離そうとしたマルコの手は、しかしエースの手をすり抜けることができない。「おい」とわずかに低い声を出したエースに、「いいだろ」とエースは言って、いや良くはない、とマルコは言いかけたが、エースの手を解きたくないのはマルコも同じなのだった。エースが酔ったままならエースのせいにできるな、とちらりと考えたマルコは、その思考があまりにも情けなくて溜息を吐いた。溜息を聞いたエースが、「…ダメか」と呟いてマルコの手を掴む左手から力を抜くので、マルコは左手に力を込めてエースの手を繋ぎとめる。「マルコ」と心もとない声で言ったエースに、「いいよい」と頷いて、マルコはまた灯りに向かって歩き出した。マルコはエースとの関係を公言する気がない。けれどもそれは、マルコがエースとの関係をやましく思っているわけでも、隠したいと思っているからでもない。むしろその逆だった。マルコとエースの関係は見てわかるだけのもので、当たり前のことをわざわざ言いふらす必要はない。だからサッチにつつかれても、親父にお膳立てされても、マルコはたいしてショックも受けずにそれを受け止めることができるのだった。さすがに平然とまで行かないのは、エースが随分若いからで、その辺りに関してはマルコも反省している。あとは、マルコとエースの間にあるものが明確な言葉で言い表せないことが原因だった。マルコはエースと恋人になりたいのだが、今のままではただの、セックスをする同僚である。エースは始終マルコに「すきだ」と告げるが、マルコがエースに送ったものは何一つない。マルコはエースにたいして何の言葉もかけていないし、エースはエースで、「すきだ」というその言葉に何の含みも屈託もない。ないように見える。それが不自然だ、と、サッチは言った。不自然だろうが何だろうが、マルコとエースの間には以前と変わらない度の過ぎた友情のようなものが走っていて、つまりエースはマルコを好いていて、マルコはエースをあいしているのだった。何も変わらない。

握られた手を見て、マルコの顔を見上げて、近付く宿の灯りを眺めて、もう一度繋ぐ掌に目を落としたエースは、にへ、と笑って、「マルコはあったかくてすきだ」と言った。「お前は熱いよい」と返すマルコには、熱いエースがすきだとは言えない。熱くても冷たくても好きだ、と言う話ではない。その通りだったが。からころと雪駄の歯を鳴らしてたどり着いた宿の軒下には、行きと同じ出迎えが待っていて、ずっと待っていたのだとしても時間を計られたのだとしても怖い話だと思いながら、マルコは素知らぬ顔で「ありがとよい」と差し出された手に風呂敷包みを預けた。「ごちそうさま、うまかった」とマルコの脇から顔を出したエースに、下足番は「それは光栄です、板前に伝えておきます」とにっこり笑って、「床を延べておきましたので、良くお休みください」と深々と腰を折る。「おやすみなさい」と礼を返したエースにならって軽く頭を下げたマルコは、雪駄を脱ぐ瞬間にふらついたエースの体を支えて、良く磨かれた廊下を客室まで進んだ。扉を開けば、少し落ちた照明と柔らかい布団に出迎えられて、2組の布団が離れて敷かれていることにひどく安堵したマルコは、ひとまず濡れたシャツを肩から落とす。必然的にエースの手は離すことになって、幾分残念そうな顔をするエースに「お前も脱げよい」とマルコは言った。「もう一度するか?」と首を傾けたエースの米神を弾いて、「風呂に入るんだよい」と呆れたようにマルコは返す。ああ、と思い出したように漏らすエースは、ばさばさと服を脱ぎ捨てて、あっという間に真っ裸になった。これに欲情できるのはある意味すげえよい、と自分で自分に嘆息するマルコは、エースが脱ぎ捨てた服をまとめて、「先に入ってろい」と臆の扉を指差す。「マルコは」と尋ねたエースに、「俺はこれを洗ってから行くよい」とシャツを掲げて見せて、「わかった」と頷くエースは真っ裸のまますたすたと風呂に歩いていく。エースの背に、マルコが「すぐ行くから、中で寝るなよい」と声をかければ、エースはひらひらと後ろ手に手を振った。大丈夫だろう。と、思いたい。備え付けの洗面台でじゃぶじゃぶとシャツを洗って、ぎゅっと固く絞ってハンガーに掛けたマルコは、とりあえずそれを自然乾燥にまかせることにする。例え乾かなくても、マルコとエースがいれば何の問題もない話だ。特にエースがいれば、さらりと羽織って1分待つだけで人間アイロンだ。水を掛けてもスチームにはならないところが難点だが、と、埒もないことを考えたマルコは、エースを待たせていることを思い出して足早に露天へ向かった。

小さな脱衣所で服を脱いで、置いてあったタオルで一応前を隠すマルコは、ふ、と軽く息を詰めて浴場へと続く扉を開いた。しない、とエースには言ったが、しないのとしたいのは別の話である。色気のないエースに欲情するマルコ自身を、もう随分前から諦めているマルコは、マルコをあまり信用していない。頑張れ俺、と心の中でエールを送ったマルコの目に飛び込んだのは、しかし浴場の床にべたりと座りこむエースの姿で、「なんで湯船にいないんだよい」と漏らしたマルコの声にくるりと振り返ったエースの目は半分座っている。「だって熱いだろ」とむくれた声を出したエースは、がばりと身体を起こしてマルコに近づいて、何だよい、と言ったマルコに「遅い」と言った。湯船の縁には、やはり年を経た白梅が一本根付いていて、薄明かりの中でエースに影を落としている。

「早く洗わねえと落ちなくなるだろい」
「いいじゃねえか、シャツいっぱい持ってるだろ」
「ここから帰る服がなくなるのは困るよい」
「じゃあここで洗えよ」
「お湯だと固まるよい」
「…そうなのか?」

酔っているからなのか何なのか、理不尽なことを並べ立てるエースにあくまで正論で返していると、最後の言葉にエースが反応するので、「固まるよい」と、マルコは話を膨らませて流すことにした。「なんで」と期待通り食いついたエースに、「卵の白身は熱で固まるだろい」と告げれば、エースは一瞬黙って、「おんなじことか?」と尋ねるので、「おんなじことだよい」と澄ました顔でマルコは返す。アレもいわゆるひとつのタンパク質だ。「だから、風呂場でするときは冷水で流すといいよい」と続ければ、「そんな知識要らねえよ」とエースは両手で顔を覆って、「やっぱりそれも三番倉庫で仕入れたのか?」と指の隙間からマルコを見上げるので、「実体験だよい」とさらりと言ったマルコは、「俺は寒いから、早く入るよい」と固まったエースの背を押す。風呂でした後に排水溝が詰まったことは、今になってみれば笑い話だが、あのときは笑えなかった。モビー・ディックの中だったし。黙ってしまったエースと、肩まで岩風呂に浸かって、マルコは自然と力の抜けた手足を伸ばす。こじんまりとした浴場は、けれどもふたりで浸かるには十分の広さで、「ああ気持ちいいよい」とざぶざぶ顔を洗ってマルコは言った。はらり、と一枚舞い降りた花びらは湯の中できれいに揺れる。美しい、と感じるだけの花びらしかない浴室は、おそらくマルコとエースが入るすぐ前に掃除されたばかりだ。「そうだな」と隣で言ったエースの声があんまり小さいので、「どうしたんだよい」とエースを眺めれば、エースは湯船の中で膝を抱えている。「そんなに熱いかい」とマルコが言うと、「そうじゃねえけど」と身体を倒して立てた膝に頬を預けたエースは、「なんかいろいろ遠いよなあって思って」と言った。意味がわからないマルコは、「何しょげてるんだよい」と手を伸ばして、もつれたエースの髪をがしがし撫でる。黙ってマルコの手を受け入れるエースの顔に、こみ上げるのはやはりいとしさばかりだ。こんな子供を、こんなにあいしてしまって、どうしたらいいのかわからない。性的にはもう伝えてしまったので、他に何か、と無表情に考えるマルコは、そういえばエースが随分汗をかいていたことを思い出した。

唐突に「よい」と言ったマルコに、「なに」とエースは返して、「なんでもねえよい」と言言い置いたマルコがざぶりと湯船から出るのを眺めている。「上がるのか?」と立ち上がりかけたエースを制して、「お前はそこにいろよい」とマルコは笑った。なんだよ、ともう一度言ったエースは、それでもおとなしく風呂に膝を付けて、縁の岩に肘を掛けてマルコを見ている。少しだけ辺りを見回して、浴場の隅に置かれた手桶と石鹸とシャンプーを探したマルコは、それらを手にとってエースの前に戻った。石の床に腰を降ろして、「エース」と名前を呼べば、「うん」とエースは返事をして、「そのままもうちょっと…そうだな、こっちに肘付いて、身体を前に倒せよい」と言うマルコの指示に素直に従っている。「よいよい」と満足そうに頷いたマルコが、手桶で湯を汲んでざぶりとエースの頭を濡らせば、「ぶへ」と妙な音が聞こえて、「なんだよ?!」と予想外だったらしいエースから抗議の声が上がった。そりゃそうだな、と思いながら、「いいからおとなしく洗われてろい」とマルコがエースの頭に手を掛けると、「え、…シャンプーしてくれんの?」と勢いよくエースが顔を上げるので、「だからおとなしくしてろっつったろい」とマルコはわりと力を込めてエースの頭を押し戻す。「…首痛ェ…」と呟いたエースの声に少しばかり哀愁が漂っているので、「そりゃ悪かったな」とまるで悪びれていない声でマルコは言って、胡坐をかいたままもう一杯湯を掬って、「目閉じてろい」と今度は声をかけてエースに浴びせた。使いきりのシャンプーの口を開いて、形のいいエースの後頭部に垂らすと、「うひ」と冷たかったらしいエースが上擦った声を出して、それがあんまり先ほどのセックスの喘ぎ声に似ているものだから、マルコは煽られるより先に笑ってしまった。やっぱり、こんなに色気のない声はこういうときの方が似合うだろう。力の抜けたエースの身体は、年相応のしなやかさを見せて、マルコは素直に称賛する。良く育った、と欲情する前に褒めてやりたいマルコは、それなりに丁寧な、でもそれなりに遠慮のない手つきでエースの髪に指を差しこんだ。爪を立てずに指を立てるマルコの手つきに危なげなところは少しもなくて、マルコはエースの身体が少しずつ前のめりになるのを面白そうに眺めている。「気持ち良いかい」と声をかければ、ビクッとエースの身体が跳ねて、「寛ぐのはいいが寝るなよい」とマルコは釘を刺した。「マルコ、髪洗うの上手だな」とぽつりとエースが言うので、「お褒めに預かり光栄至極だよい」芝居がかった口調でマルコは返して、「なんだよそれ」とエースが肩を揺らすので、マルコも満足だった。がしがしがし、とくまなく指をめぐらせて、「痒いところはねえかい」とマルコが尋ねれば、「ねえよ」とエースはうっとりした声で言って、うっかりドキッとしたマルコは、「じゃあ流すよい」と汲んでおいた湯をまたざぶりとエースにぶちまけた。すこし乱暴だったかもしれない。一度では消えない泡を、二度三度と掬う手桶の湯ですっかり流して、「いいよい」とマルコが言えば、エースは両手で髪を掻き上げながら「サンキュ」と身体を起こした。どう考えても贔屓目に惚れた欲目が重なっているが、水も滴る何とやら、である。エースに対しては、自分に正直であることを心がけるマルコは、矛盾をもろともせずにエースにときめいていた。それはそれで良いものである。一瞬ぼうっとしたマルコに、「ありがとな」ともう一度エースは言って、それから赤い顔で岩風呂の縁に顎を乗せた。「…そろそろ限界です」と呟いたエースに、「そうみてえだない」とマルコは頷いて、手桶を置いてエースに左手を差し出す。同じく左手を上げたエースを、湯の浮力を借りて引っ張り上げて、「歩けるかい」とマルコは笑う。「当たり前だろ」と返すエースの顔も悪戯っぽく笑みに彩られていて、「そりゃ残念だ、背負ってやろうと思ったのに」と大げさに息を吐くマルコに「全裸では遠慮する」とエースは言った。ありがたい話である。

また手を繋いだまま、浴場から脱衣所に上がったマルコとエースは、ざっと身体を拭いて用意されていた浴衣に袖を通す。通したところで、「これどうするんだ」と袷を開いたまま紐をまわしているエースの手をやんわりと押し退けて、「押さえてろい」と閉じた袷に置いたマルコは、くるりとエースの腰に帯を回した。たいして細くもないエースの腰は、けれども他がしっかりしているので僅かばかり心もとなくて、マルコは無言のままするりとエースの背中を撫で降ろす。少しだけ緊張したエースの背中をぽんぽんと叩いて、ぎゅっと帯を締めたマルコは「これでいいよい」と身体を起こす。「おう、ありがと」と笑うエースの顔はまだしっかりしていて、マルコが帯を閉めてしまうまで、居室には戻らなかった。先ほど抜いた服をまとめて(マルコの分だけだが)戻れば、真新しい畳みの匂いに包まれて、やはり良い宿だ、とマルコは頷く。「布団はどっちがいいよい」とマルコが尋ねると、「窓際かな」とたいして迷いもせずにエースは言って、「よい」と頷いたマルコは先ほどまとめたエースの服を窓際の枕元に移動させた。まだまだ乾かないマルコのシャツをちらりと眺めて、今のうちに乾かしてもらってもいい、と思ったマルコがエースに目を移せば、エースはすでに首まで布団に潜っている。「早ェなおい」と苦笑しながら、灯りを一番下まで絞ったマルコがもう片方の布団に腰を降ろせば、「なあ」と首を捻って、エースはマルコを見上げた。「なんだよい」と穏やかにマルコが返せば、「布団が二つあったら、一つずつ使うのは普通だよな」とエースが言うので、マルコは何と返していいか分からずに、ぽかんと口を開いてしまった。「マルコ」とエースが名前を呼んで促すので、「…まあ、そりゃそうだろい」とマルコがエースの言葉を肯定すれば、「そうだよな」とエースは頷いて、「おやすみ」と目を閉じようとするので、待て待て待て、とマルコはエースの頬を摘まむ。「どうした?」と眠そうな目でエースが言うので、「お前一人で納得して寝るんじゃねえよい」とマルコはわりと必死だった。何しろ、エースの言葉はわかりやすくても、エース自身は単純すぎてとてもわかりにくいので。ぱち、と瞬いたエースは、ああ、と一つ頷いて、「俺は布団が何枚あってもマルコと一緒に寝てえけど、普通はしねえんならいいんだ」とごく普通の顔で言い放つ。そしてまた目を閉じようとするので、マルコはもう一度、今度は強めに頬を捩じった。「いててててててて」と悲壮感の欠片もない声を上げるエースに、「だったらそう言えよい」とマルコは言って、襖側の布団から枕を取ってエースの隣に落とす。「ほら、そこ詰めろ」とマルコがぞんざいにエースを押しのけると、「おう」とエースは素直に半分スペースを開け渡して、マルコはその隙間に身体をねじ込ませた。柔らかな布団は、たった数分間でエースの熱に侵されていて、あまり風呂で温まれなかったマルコには心地良い限りである。隣では、目を閉じたエースが「にひ」と妙な笑い声を落として、夜の静寂を埋めている。「おやすみ」とマルコが告げると、「おやすみ」ととても丁寧な音をエースは紡ぐので、マルコは急速に眠くなった。温泉もセックスも、眠くなるものだ。

うとうとと眠りに引き込まれながら、明日の朝風呂と朝飯が楽しみだ、とマルコは思った。まるで、隣で眠るエースのような思考回路だった。

(エースの髪を洗うマルコ / なんとか宿に帰りました / マルコとエース / ONEPIECE )