きらきらぴかぴか

※こどもに性行為を強要する話ですのでご注意ください。



残業が続いた週末のことだった。
明日から三連休、とともかく暦通りの休息が得られることに感謝しながら歩いていた土方は、駅から一本入った道路の先に警官の姿を認めて、思わず踵を返しそうになった。電柱の傍らに自転車を止めた警官は、どうやらかなり小柄な相手を前にしているらしい。今でさえ全うな職に就いているが、学才時代から数年前までわりとやんちゃなーという言葉で済ませるには少しばかり度が過ぎるー行為に勤しんでいた土方は、今も警察が苦手である。
いっそ迂回して帰るか、と細い路地に目をやった土方は、でもこの先のコンビニに用があるのだった。落ち着け、スーツ姿に黒髪ならそうそう職質を受けることもない、と自身を落ち着かせた土方は何食わぬ顔で歩き続け、やがて何事もなく横をすり抜けるーと思った矢先、警官の陰に隠れて見えなかった話し相手の顔が覗いて、「ぎんとき?」と声が漏れる。
その瞬間、警官に捕まっていた銀髪のこどもはぱっとその手を降りきって、「パパ!」と土方のシャツを掴んだ。ぱ…?と呆気に取られた土方だが、こちらを振り向いた警官のいかにも胡散臭そうな目と、土方にすがり付くようなこどもの手がひどく緊張しているのとですぐさまこどもの味方をすることに決め、「お前、こんな時間に何出歩いてんだ。先に寝てろっつったろ」とこどもの頭を乱暴にかき混ぜる。
それから、「うちの子がご迷惑をお掛けしました。ほら、お前も謝れ」と警官に向き直れば、「お父さん…ですか?失礼ですがずいぶんお若く見えますね」と、警官が危ぶみながら尋ねるので、土方はこどもの耳を塞いでから「妻の連れ子です」と、小声で返し、「なんでしたら身分証明書もお出ししますが?」と鞄に手をかけた。
こちらこそ失礼しました、といくらか気まずそうに帽子へ手をやった警官は、「君、お父さんのお迎えならそう言うんだよ」と声音を変えてこどもの顔を覗き込むが、こどもはぴったり土方にくっついて離れようとしない。「お世話になりました。良く言って聞かせますので」と土方がもう一度頭を下げれば、「この辺りも物騒になりましたから、そうしてください」と警官も軽く頭を下げて、自転車に乗って行ってしまった。

後ろ姿が見えなくなるまで警官を見送ってから、ようやくこどもは土方から手を離して、ぺこ、と土方に向かって頭を下げる。どう見ても心のこもったそれではなかったが、ある程度感謝はされているらしい。そのまま走り去ろうとするこどもを、「ちょっと待て」と引き止めれば、「助けてくれてありがとうゴザイマシタ」とこどもは無愛想な声を出したが、「お前、ほんとに銀時か」と構わず土方は問いかけた。
一瞬射竦めるような目をした銀時が、「…あんた誰?母ちゃんの新しいカレシ?」と投げやりに問い返すので、「覚えてたわけじゃねえのか」と拍子抜けしたように土方が呟くと、こどもはじりっと後ずさって「おれは母ちゃんじゃねえから、おれで点数稼ごうとすんなよ」と、警戒心を滲ませながらこどもは言う。

「誰がそんなせこい手を使うか。っつうかカレシでも客でもねェよ」と首を振った土方が、「しばらく一緒に暮らしてただろ。全部忘れちまったか?」と、しゃがみこんでこどもと―銀時と視線を合わせれば、眉根を寄せた銀時は「いつの話だよ」と、やはり不審そうな声で答えた。
「三年前」と淀みなく答えた土方に、銀時は一瞬視線を彷徨わせて、上から下まで土方を眺めた挙句に「だって、…アレは金色だったし」とあやぶみながら言うので、「あの頃は染めてたんだ。黒歴史だから余所で喋んなよ」と、土方はあっさり返す。
ごくり、と息を飲んで、「…トッシー?」と囁くように言った銀時へ、「そうだ」と頷いた土方は、「それにしても、でかくなったなお前」といまさらのように銀時を眺めて言った。呆気に取られたような顔の銀時は、「トッシーこそ、変わりすぎだろ」と、ぽつりと呟いた。

▽ ▽ ▽

土方が銀時と過ごしたのは、四年前の春から三年前の夏までだった。
銀時の母親は、土方が当時勤めていたホストクラブの上階でホステスをしており、まだ若かった土方にあらゆる意味で親切にしてくれた。幼い頃に両親を亡くした土方は、高校卒業と同時にそれまでバイト先だったクラブに就職し、安っぽい笑顔を撒き散らすことに疲れていたので、子持ちの彼女に女よりも母性を感じていたことを覚えている。
二十二の春、偶然だが土方の誕生日に入籍した土方は、その日の内に彼女のマンションへ引っ越し、そこではじめて銀時と顔を合わせたのだった。居間からちょんと顔を覗かせた銀髪のこどもに、土方は一瞬出た、と背筋を震わせたのだが、血色のいいこどもはそわそわした様子で土方を見つめるばかりで何も怖いことはない。父親似なの、と彼女はそれ以上語らず、銀時と土方を引き合わせることもなかった。畳一間だった土方のアパートと比べれば彼女の二DKは格段に広く、はじめのうち、土方は銀時をほぼ認識しない生活を送っていた。
銀時は、昼夜が逆転した土方の眠りを妨げることもなければ、母親を求めて泣くこともない。まだ未就学児だった銀時はひどく手のかからないこどもで、まさしく母親が手をかけずに育てたこどもだった。彼女は銀時を疎んでいなかったし、土方にも最初からこどもの存在を告げてはいたが、銀時を慈しんでいるようには見えず、そして銀時自身もそれが当たり前のようにふるまっている。
親の顔もろくに覚えていない土方にしてみればそんなものか、と言う程度のことだったが、今思えばあれは異常な関係だったのだろう。そういえば、銀時は幼稚園にも保育園にも通っていなかった。
そんな日々が一ヶ月ばかり過ぎたころ、土方は久々に何の予定もない休日を得た。なんだかんだヘルプに入ったり同伴の予定があったり、満足に休める職業ではないので、出勤する彼女をベッドから見送った後も、しばらくとろとろと惰眠を貪っていた土方は、キィ、とドアが開いた音で目を覚ます。半分だけ身体を起こしてくるりと振り返れば、大きな目を真ん丸にした銀時が立っているので、「よう」と土方は眠い目で片手を上げた。
途端に、棒立ちだった銀時がはじかれたような勢いで廊下へ走り去るので、逃げることはないだろ、と土方は若干凹んだが、寝起きの目付きが最悪なことは重々承知しているので文句は言えない。けれども、たったったった、と遠ざかって行ったごく軽い足音は、しばらく休んでからまた同じ音を立てて寝室に近づいてくる。半開きのドアからもう一度顔を出した銀時は、そうっと部屋に滑り込むと、ベッドの土方に水の入ったコップを差し出した。
「俺に?」と、純粋に驚いた土方が尋ねると、銀時はこくりと頷いて、じっと土方を見つめる。ありがとう、とともかくコップを受け取った土方は、銀時の視線を受け止めながら良く冷えた水を飲み干した。酒で荒れた喉と胃に沁み入るようだった。
人心地付いた土方がコップを手にベッドから降りようとすると、「おかわり?」と銀時が初めて言葉を発するので、「もういい」と首を振ってから、土方は銀時の隣にしゃがみ込む。土方の腰までしかないような幼い銀時の髪は、間近で見るとさらにふわふわの銀髪で、土方は思わずわしっと銀時の頭を撫でた。びくっと身体を揺らした銀時に、「挨拶が遅れたが、土方十四郎だ。お前、俺の事は何か聞いてるか?」と土方が尋ねると、「ママのすきなひと」と銀時が即答するので、「その言い方はちょっと…アレだな、恥ずかしいな」と土方は赤くなった頬を押さえる。
それから、「俺は父親って柄じゃねえし、良い父親になれる気もしねェからパパとは呼ぶなよ」と土方が続けると、「なら、トシくん?」と銀時はことんと首を傾げた。とうしろう、と縮めてトシ。彼女が土方を呼ぶそれに、「お前、どこにいるかわかんなかったけどちゃんと聞いてんのな」と土方が妙な感心の仕方をすると、「トシくん、おなかすいた?」と土方に構うことなく銀時は言う。土方が素直に頷けば、「ごはん」と銀時は土方を誘うようにドアを指した。


「最近、あのこと遊んでるみたいね」と彼女が言うので、「ここにきて思い出したけど、俺昔弟が欲しかったんだよな」と土方が返せば、「こんな大きな子がいる年じゃないわよ」と彼女が芝居がかった調子で頬を膨らませるので、「ママって呼んでいいか?」と笑いながら、土方は彼女の柔らかい胸に顔を埋める。そんなうプレイも悪くは無かった。

けれどもそんな生活は、彼女に新しい男が出来たところであっけなく終わった。それまでも何度かあった軽い浮気と違い、男と暮らすためにマンションを出たいと言う彼女と大きな喧嘩をした土方は、紙切れ一枚で関係を終わらせて他人に戻った。
家賃を入れないどころかほとんど食わせてもらっていた土方は、いつの間にか溜まっていた貯金で家を借りた。ついでとばかりにホストを止め、高校時代から続けていた金髪を黒く染め直して、小さいながらもまともな会社に就職を果たした。ちょうど第二新卒とやらの波に乗ったおかげで、高校卒業からの土方の空白の五年間はさほど追及されなかったし、家族がいないので過去を切り捨てるのも簡単だった。中途採用者など掃いて捨てるほどいる上に、野次馬根性の強い連中もホスト時代に培った技術でどうとでも煙に巻ける。
触れられたくない過去が、と若干暗い顔で仄めかしておけばあとは勝手に向こうが補正を掛けてくれた。土方の両親が事故死しているのも、ある意味強みになっている。同期だが二つ年下の彼女もできたし、人生などどう転がるかわからないものだ。土方はそうやって平凡な生活を手に入れ、三年間を過ごしたのだった。

▽ ▽ ▽

彼女の家を出るとき、銀時は彼女の部屋に居たので、土方は銀時に別れの挨拶をしていない。しばらくは様子を見に行こうとしたこともあったのだが、結局行動には移せないまま、銀時のことは過去になってしまっていた。
あらためて銀時を眺めた土方は、三年前よりずっと細くなった身体に眉をひそめて、「それで、こんな時間に何してんだ?」と、真っ先にすべきだった質問をぶつける。

さっと顔色を変えた銀時は、土方を睨むように「あんたには関係ない」と言うが、「俺は今からお前を別の交番に引っ張ってもいいんだぞ」と土方が脅しを掛ければ、ひどく口惜しそうな顔で「…部屋に母さんとカレシがいるから、朝まで帰れない」と銀時は答えた。
はっ?と口を開いた土方が、「朝まで…って、お前どこで寝る気だよ。つうか学校は?飯はどうしてんだ」と問いを重ねると、「いつもいる公園に人がいて、だからちがうとこ探してたら捕まった。学校が始まる前にランドセル取って、あと金はもらってる」と、銀時はポケットから四つ折りの紙幣を出して見せた。剥き出しの千円札が一枚。
少し考えて、「毎日か」と尋ねた土方に、銀時は答えなかったが、それが答えのようなものである。
「もういいだろ」と俯いた銀時が呟くので、「そうだな」と土方が頷いてやれば、銀時はほっとしたような顔で歩き出そうとするが、「そっちじゃねえよ」と、土方は銀時の細い腕を掴んで引き止めた。
「なんだよ?離せよ」と暴れかけた銀時に、「パパのお迎えに来てくれたんだろ。家はこっちだ」と土方が返すと、銀時はいつかと同じ真ん丸な目で土方を見つめ、「なに、それ」とぽつりと零した。
銀時の腕を掴んだまま、「汚ェ部屋だがな、野宿よりはいくらかマシだろ」と土方が何でもない声を出せば、「…トシくん、カノジョいねぇの?」と絞り出すような声で銀時が言うので、「今日、家にはいねぇよ」と土方は含みを持たせて言う。
強張っていた銀時の身体から力が抜けるので、土方が銀時の腕を離して小さなてのひらを握り直すと、銀時はそっと土方の手を握り返した。銀時のてのひらがいくらか冷たいので、「こども体温はどこ行ったんだよ」と、土方は照れ隠しのように笑った。

手を繋いで歩きながら、「何もねぇから、そこのコンビニ寄るぞ」と土方が言うと、銀時が無言で千円札を取り出すので、「それはしまっとけ」と土方は銀時の手を押し戻す。
「でも、」と口を開きかけた銀時の言葉を遮り、「出世払いだよ、お前に返せばあいつも文句ねえだろ」と、土方は銀時の手をぶんぶん振り回した。ん、と僅かに頷いた銀時はまたポケットに札をしまい込んで、土方の隣を歩き続ける。
沈んだ様子の銀時だったが、コンビニで土方が選んだエビマヨ弁当とプリンを見たときは少しだけ笑って、「マヨは?」と別の棚を指す。
それは覚えてんのか、となぜか嬉しくなった土方が、「マヨネーズは充分ストックしてる」と誇らしげに胸を張れば、「それそんなに自慢することかよ」と銀時はとうとう吹き出した。大きくなった、と言ってもまだ土方の胸に届かない銀時の前髪を掻き上げてやりながら、「お前、口悪くなったな」と土方が何の気なく言うと、銀時はさっと笑いを止めて「それはあんたに、」と言いかけて口を噤む。あんたには言われたくない、だろうか。
確かに綺麗な言葉遣いとはとても言えないので、土方はさして気にも止めず、コンビニを出たところでまた銀時と手を繋いだ。「お前、いくつだっけ」と尋ねた土方に、「十月で九歳」と銀時が返すので、「そういやもうすぐ誕生日だったな」と土方は思い出す。
ゆるりと顔を上げた銀時は、「なんで」と不思議そうな顔をするが、「十月十日だろ?忘れねえよ、俺の倍だし」と土方は随分大荷物になったコンビニ袋を揺らさないように振って見せた。
土方が銀時の誕生日を祝ったのは一度きりだったが、土方が持ち帰った一人用のバースデーケーキ(おそらく彼女は興味が無いだろうし、土方も甘いものは好まない)だけでも銀時は大喜びして、土方にチョコプレートを分けてくれたことを覚えている。たぶん、銀時にとってはそれが一番の好意だった。



土方の住まいは、駅から五分のコンビニからさらに四分進んだ坂の上にあった。五階建てアパートの二階の角部屋は、なぜかここだけインターホンがカメラ付きで、さらに他の部屋より二万円部屋代が安い。そして築十八年とは思えない程全面的にリフォーム済みだった。
どう考えても事故物件なのだが、不動産屋も大家も何も語らないし、ろくな保証人もいななかった三年前の土方はそんなことに構っていられる立場でもなかったので、結局三万五千円の一Kに今も住み続けている。
今のところ何もないのが逆に怖いが、何かあっても困るので土方が引っ越すまでは平穏な暮らしが続くことを願うばかりだった。
鍵を開けた土方が、「ほら」と銀時を促せば、銀時はおずおずと玄関に足を踏み入れて、「お邪魔します」と誰もいない室内に声をかける。何かを待つような動作をした銀時が、一拍置いて靴を脱ぎだすので、「お前、今何か聞いたか」と
土方が尋ねれば、「なにも聞こえねえよ」と逆に不審そうな顔をされて、「ならいい、気のせいだった」と土方も家に入ると、かちんとサムターンを廻した。
念のため普段はかけないチェーンもかけた土方は、ガス台の前で立ち尽くす銀時にいちご牛乳とビールとプリンを渡し、「先向こう行ってろ、弁当温めるから」と告げる。素直に頷いた銀時は、台所と居室の境にあるガラス戸を開けて、するりと中に入り込んだ。
「電気はここな」と声を掛けてから、土方が台所側の壁についたスイッチを押せば。銀時は明るくなった部屋をぐるりと見渡して、「ほんとに汚ェな」としみじみ呟いた。真実である。
適当に座るとこ作れよ、と無茶を言ってから、土方のエビマヨ弁当と銀時のハンバーグ弁当(小)を温め、ついでにインスタントの味噌汁とマヨネーズのボトルも付けた土方がガラス戸を開くと、中では銀時がくるくる動いて部屋を片付けているところだった。
脱ぎっぱなしのシャツは軽く畳んでまとめられ、あちこちに落ちていたゴミはレジ袋に、しかも分別して放り込まれ、ベランダから取り込んでそのままになっていた洗濯物は畳まれて、読み終わったマガジンは部屋の隅に積み上げられている。
土方の枕をぽんぽん叩いて膨らませていた銀時が、「台拭きあるか?」と土方を振り返るので、「新品なら台所に」と土方が返すと、「ビール零した痕くらい拭けよ」と銀時は苦笑して、小さなローテーブルを指した。
「スミマセン」と謝罪した土方に、「トシくん家だからいいけど」と銀時が付け加えるので、「
冷たいこと言うなよ」と土方は薄く笑って、まだ糊の利いた布巾を水で絞って銀時に手渡す。ごしごし机を拭いた銀時が、真面目な顔でよし、と言うので、「お前良い嫁になるよ」と土方は軽口を叩いて、洗濯機の上に避難させていた弁当と味噌汁をローテーブルに並べた。
いちご牛乳とビールとプリンを追加すれば、六十p四方のテーブルはそれだけで一杯になって、「今度もっとでかい机を買わねェとな」と土方が呟くと、「今まで彼女が来た時はどーしてたんだよ」と銀時は呆れたように首を捻る。
「彼女は実家暮らしだから、男の家に泊まりには来ねえよ」とあっさり答えた土方が、そのままエビマヨ弁当にねろねろとマヨネーズを絞り出して食べ始めると、銀時はぱちっと一度手を合わせて、土方よりよほど綺麗な箸使いでハンバーグ弁当を口に運んだ。いちご牛乳で良く飯が食えるな、と土方は思うが、いろいろな意味でビールよりはマシかもしれない。
エビマヨ弁当に入っていた金時豆と、ハンバーグ弁当のポテトサラダを交換しながら和やかに食事を終えた後、プリンを口に運んだ銀時が妙な顔をするので、
ふと思い立った土方がプリンにマヨネーズを絞り出してやると、ぎょっとしたような顔の銀時はそれでもプリンを一匙すくって、「あんた、ほんとにトシくんなんだな」と、へらりと笑った。



風呂を貸してやったあと、土方のTシャツとトランクスを身につけた銀時が濡れたタオルを手に部屋の隅で丸まり込むので、「なにしてんだ、早く来い」と、土方はベッドの上から銀時を手招く。
「ここで寝る」と首を振った銀時に、「ばか、誰が寝かしてやるって言ったよ」と土方は返して、「いいから早く」と続けた。きょとん、とした顔の銀時が無防備に近づいてくるので、土方は銀時の薄い身体をひょいと持ち上げて、背中から抱き込む。
細いが柔らかい腕をさすりながら、「お前、母親に似てきたな」と土方が言うと、「トシくん?」と銀時が不安そうに振り返ろうとするので、「知らない人について行くなって学校で教わらなかったか?」と土方は銀時の耳元で囁いた。
ごく、と息を呑んだ銀時は、「トシくんは、知らない人じゃない」と返すが、「俺が誰でも、『パパ』にするつもりだったんだろ」と土方は首を振って、肩が落ちた銀時のTシャツの裾をするりと捲る。 
滑らかな腹部をそっと撫でれば、「トシくん、」と銀時が土方の腕を掴むものの、「大丈夫だって、こどもにも穴はあるからな」と土方はあやすように銀時の頭を撫で、「大人しくしてたら優しくしてやるから」と、今度こそゆるりと笑った。
平らな胸に指を這わせ、「さすがに乳首は反応しねえな」と呟いた土方は、ゆるいトランクスのゴムを押し下げて、「なあ、お前ここで遊んだことあるか?」と、柔らかい銀時のチンコに指を絡める。
銀時が反応しないので、「答えねえとこのまま潰すぞ」と土方が指に力を込めれば、「ない!ないから止めろ!」と、銀時は悲鳴のような声を上げて首を振った。
「止めろ、じゃねえだろ?」と、銀時の顔を覗き込んだ土方に、銀時は薄く膜の張った目を向けて、「なんでこんなことすんだよ、トシくん」と掠れた声で言う。少し考えて、「お前なら犯しても誰も心配しねェだろ」と土方が答えると、銀時の目の淵からすうっと涙が溢れて、耳の後ろに流れた。
「泣いても終わらねェから、がんばれよ」と、もう一度銀時の髪をふわふわ撫でた土方は、根元を握っていた銀時のチンコをやわやわ揉み解す。初めは何の反応も無かったが、土方が緩急をつけ始めると少しずつ勃ち上がって、土方のてのひらを軽く押し返した。
達成感に満ちた土方が、「なあ、わかるか?」と銀時の手を取って無理やりチンコに触れさせると、「なに、これ」と銀時がまたもがくので、「ばか、暴れんなよ」と土方は片腕で銀時の腹を抱え、両足で銀時の足を開いた形で固定する。
「チンコ生えてたら誰でもなるから、心配すんな」と宥めるように銀時の手を押さえた銀時が、「それに、お前俺とあいつのセックス覗いたことあんだろ」と続ければ、「ちがっ、あれは間違えただけで、覗いたんじゃ」と銀時は首を振った。
そういうことにしておいてやってもいいけどな、と鼻で銀時を笑った土方は、「どっちにしろ、今日はお前のここに入れてやるから楽しみに待ってろ」と、肉の薄い銀時の尻たぶを掴んで、アナルの上を親指で押さえる。
横顔でもわかるほどさっと青褪めた銀時は、「むり、ぜったいむり」と首を振ったが、「やってみなきゃわかんねえよ」と、土方はいっそ優しい声で銀時の手ごと銀時のチンコを包んだ。
びくん、と背を震わせた銀時に、「そろそろ気持ち良くなってきたか?」と土方が尋ねれば、銀時はふるふる首を振って「わ、かんねぇ、でも何か出そう」と、チンコから手を離そうとするので、「そのまま出せよ」と、土方は銀時のてのひらを使って銀時のチンコを一際強く擦り上げる。
やだ、やだ、とほとんどしゃくりあげるように首を振っていた銀時は、最後にもう一度「や、やだ、や、いや、トシくん…!」と、土方の名を呼んで、ほとんど透明な精液を吐きだした。
くったりしたチンコから手を離し、「ほら、これがこどもの素だ」と、土方が銀時に銀時の精液を見せつければ、「こど、も?」と息の上がった銀時が言うので、「俺もお前もこれからできてんだよ」と、土方は銀時の頬にべったりと精液を擦り付ける。
土方が銀時を拘束していた腕と足を解くと、銀時がほっとしたような顔でベッドから逃げようとするので、「だから、まだ終わってねェっての」と、土方は銀時の足首を掴むと、先ほど抜いたばかりのネクタイを拾って、手早く銀時の右足首をヘッドボードに括った。
「お前、身体柔らかいな」と、ほとんど腰が浮く形になった銀時を見下ろして土方が言えば、「も、や…やめてください」と、銀時は両手で顔を覆う。
「まだ何もしてねェだろ、俺は」と、銀時の太腿の裏側の弾力を確かめた土方は、トランクスの裾から指を入れて、チンコの裏筋からアナルまでをつうっとなぞった。
ひっ、と息を呑んだ銀時に、「そんなに早く終わらせて欲しいならこのままブチこんでやろうか」と、土方が銀時の足に股間を擦り付けると、銀時は青を通り越して白くなった顔でぶんぶん首を振る。
いい子だ、と銀時の頬を撫でてから、土方はベッドの下を探って封の空いたローションを取り出した。オナニーでもローション使ってて良かったな、と他人事のように思った土方は、トランクスの裾からローションの容器を滑らせて、直接銀時のアナルに容器の先端をねじ込む。
あっ、と声を漏らした銀時には構わず、そのまま銀時の直腸へとローションを流し込んだ土方は、ローションのボトルをシーツに放って、まだ固いアナルを無理やり両手の親指で押し開いた。
「やっ、いたい、痛い…っ」と、銀時は首を振って、土方の腕に手を伸ばすが、「そうだな、痛いな」と土方は軽く銀時を受け流して、中から溢れたローションの滑りで指を進める。膣と違って、アナルの中はすかすかだと聞いた覚えがある土方は、けれども銀時の腸がねっとり絡みついてくることに気を良くして、「これならなんとかなるか」と、さらに指を二本増やした。
 あ、あ、あっ、と声が言葉にならなくなった銀時が、堰が切れたように涙を零しているので、「そんなに泣くなよ、俺がひどいことしてるみたいじゃねェか」と、土方は三本入っていた右手の指を無造作に引き抜いて、精液で汚れた銀時の頬にローションを塗りつける。
ひくっ、と動いた銀時の喉に手を置き、「あとでこっちにも入れてやるから、な?」と銀時に笑いかけた土方は、左手の指もずるりと引き抜いて、スウェットからペニスを引き出した。
すでに反り返っていたペニスをもう一度扱いて、土方がぬるりと銀時のチンコの上をペニスで擦ってやれば、銀時は限界まで目を見開いて、土方の股間を見つめる。
土方が見せつけるように腰を引いてやると、銀時は無言で首を振って、足首を縛っているネクタイをかりかり掻くが、「だから、もう諦めろって」と、土方は片手で銀時の両手を纏めると、ぎゅっとシーツに縫い留めた。
完全に閉じきらない銀時のアナルにペニスを押し当てた土方は、ひくり、と動いた腸壁に亀頭を擦られて、軽く背筋を震わせる。「すげェな、お前母親より名器だぞ」と、はしゃいだ声を上げた土方は、銀時の尻たぶを押さえてアナルを開きながら、ぐっと腰を進めた。
拡げたとはいえまだ狭いアナルにはなかなかペニスが飲み込まれず、焦れた土方は銀時の手を離すと、銀時の肩を掴んで無理やりペニスを押し込む。ふあっ、と一声叫んだ銀時が土方の腕に爪を立てるが、土方はアナルの締め付けに気を取られてそれどころではない。
なんだこれ、すげェな、と上気する頬で思った土方は、もう入らない、と言うところまでペニスを押し込んでから、「あと三pか」と、銀時のアナルから土方のペニスの根元までの距離を計る。
目を見開いた銀時の反応が無いので、土方は銀時を拘束していたネクタイを外すと、太腿の裏側を持ち上げてばちゅん、と引き抜いたペニスをもう一度銀時のアナルに打ち付けた。女のように意図的な動きは感じられないが、銀時のアナルは土方のペニスを咥え込んで離そうとせず、引き抜く瞬間にぎゅっと全体を締め付ける。
アナルの入口は特にそれが強くて、「お前ほんとスゲーな」と、土方はぼろぼろ涙を流す銀時の頬に唇を当てた。すん、と鼻を鳴らし、「いたいよ、トシくん」と銀時が掠れた声で呟くので、「大丈夫だって、すぐ慣れるから」と、土方は気休めのように告げると、当たり前のように銀時の中で射精した。
はー、としばらく余韻に浸ってから、土方がペニスを引き抜けば、銀時のアナルからごぷりと土方の精液とローションが混ざった液体が溢れるので、「ほら銀時、良かったな」と、土方は銀時の腰を高く持ち上げて、赤く腫れたアナルと精液を見せつける。
真っ赤になった目で、こども、と呟いた銀時に、「そうだな、こどもができるかもな」と土方が大真面目に頷いてやると、「やだ…おれ赤ちゃん、やだ」と銀時が力なく首を振るので、土方は薄く笑って、「お前が口で綺麗にしてくれたら、こどもが出来ない方法を教えてやる」と、銀時の口元にペニスを押し当てた。
土方のペニスと顔を交互に眺めて、途方に暮れたような顔をする銀時に、「早くしねェとこども出来ちまうぞ」と土方が脅しをかければ、銀時は意を決したように口を開いて、土方のペニスをちろりと舐める。
「もっときちんと、手も添えて咥えろよ」と土方が重ねると、銀時はふっ、と胸を上下させてから土方のペニスを両手で掴み、ぱくりと亀頭を咥えた。
土方のペニスの形に膨らんだ銀時の頬に手を当て、「ん、いい子だ」と土方が褒めてやれば、銀時はごくりと喉を鳴らして土方のペニスをさらに深く飲み込む。滑らかな銀時の口の中を目一杯堪能してから、「一度口開け」と土方が言うと、銀時は素直に口を開けた。
飲み込みきれずに溜まっていた銀時の唾液をローション代わりに、ぬるぬると銀時の舌にペニスを押し付けた土方は、「吐き出したらもう一回な」と告げて、びゅるっと銀時の口の中に射精する。予想していなかったらしい銀時は、喉の奥に当たった精液で咽そうになったが、さすがに可哀想なので土方は銀時の口を塞ぎ、鼻を抓んでやった。
ん、んんんっ、んむっ、ともがいた銀時が、それでも最後にごくりと精液を飲み干すので、「やればできるじゃねえか」と、手を離した土方はまた銀時の頭を撫でてやる。激しくせき込んだ銀時は、涙目で土方を見上げて「こどもは?」と尋ねたが、「できてもいいだろ、ちゃんと産ませてやるから」と、土方は銀時の腹をゆるりと撫でる。
え、と真っ黒になった銀時の瞳を見つめた土方が、「お前に弟は作ってやれなかったから、お前に息子か娘を作ってやるよ」と噛んで含めるように言えば、銀時の目から新しい涙がぷくりと沸いて、頬に痕を残した。
午前零時を回っていた。


( 26歳リーマンの土方さんが8歳銀時くんを手籠めにするはなし/ 土方十四郎×坂田銀時 / 140905)