祭りには全力で参加しろ

※第四百七十訓ネタ/リバ風味なのでご注意ください

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屯所の押し入れで正座した銀時は、目の前に座った自分の顔を眺めて、深く溜息を吐いた。鏡の類があるわけではなく、良く似た別人と言うこともなく、いつかのように銀時を模した何かが送り込まれてきたわけでもない。そこに在るのは正しく銀時の身体で、ただし中身が違う。そっと見下ろせば、今銀時の意識がある身体は真っ黒な装束に包まれて、ヤニの匂いが立ち上ってくるし、こうしている今も胸ポケットにはきちんと煙草の箱が収まっている。つまるところ、これは土方の身体であり、目の前にいるのは銀時の身体の中に入った土方だった。こうなってしまったことについては、まあ、悔やんでも仕方がない。これからどうしたらいいかも追々考えれば良い。当座の問題は、「おい、何黙ってんだ。てめーがやんねーなら俺がやるぞ《コレである。
銀時(身体は土方)の襟首に手を掛けた土方(身体は銀時)の腕をがしっと抑え、「いやいやいや、ちょっと待とう、おかしい、コレ絶対おかしいよ、こんなことしてる場合じゃねーよ俺達、ちょっと落ち着こう?落ち着いて、まずは元に戻る道を探すところから始めよう?タイムマシンを探そう??《と、銀時が必死になれば、「だから、その一歩目として合体から始めて見ようっつってんだろ。こういうタルるートくん的ハプニングは古来よりキスやら性交やらで解決するって決まってんだよ《と、瞳孔の開いた目で土方は言う。俺こんな顔もできるんだな、つーか戻った時血管切れたりしてねーよな?大丈夫だよな??!と思いつつ、「俺もそれは重々承知の上だけども、でもちょっと待てェェェ、悪ィけどこの漫画ドタバタ人情SF時代劇コメディ!!残念だけど、ほんっと残念だけどラブコメ要素は欠片もねーンだよ!つーかお前アレだよな、マガジン派とか言いつつ結構ジャンプ漫画も読んでるよな!ToLOVEるじゃなくてタルるートくん持ってくるあたり同世代だよな!!そう言うとこ好き!《と銀時が叫ぶと、「そりゃありがとよ。で、どんだけ待ちゃいいんだ、五分か?二分か?それとも三十秒か《と、土方がまるで腕の力を抜かずに返すので、「なんでだんだん減ってくの?!ダメダメダメ、恋人間でも強姦罪は適用されんだぞ!つーかさ、そう言うんじゃなくて、たんま!この体勢がもうヤバい、足攣りそうだもん、こんなとこでやったら体壊すよ、お前の身体が壊れるよ!お願い止めて!!《と、なりふり構わず銀時は懇願した。
チッ、と舌打ちしてようやく離れた土方が、「何が気に入らねえんだよ、てめーは。もういろいろ譲歩してんだろが《と、ひどく上機嫌そうに言うのを聞いた銀時は、「いや、あのさ、譲歩の仕方が違うよ。どういう発想の転換で自分の顔押し倒すことになんだよ《と、着衣の乱れを直しながらぶんぶん首を振る。土方はその間にごそごそと着物(銀時がいつも着ている流水柄の着流し)の袂を探り、見つけ出したいちごみるくをしばし眺めてから、銀時に向けて放り投げた。「あ、どーも《と銀時がキャッチすると、「内ポケットにマヨネーズあるから、それ取ってくれ《と、土方は言う。直にマヨネーズですか、とすでに見慣れつつある赤いキャップのマヨネーズを取りだした銀時は、しかしそのチューブを見るだけで土方が生唾が飲む現象に、マヨネーズでパブロフの犬?!と、改めて土方のマヨネーズ中毒を思い知った。まだ煙草の方がマシだったものの、こんな場所で煙草を吸われるのは様々な意味で自殺行為なので、銀時はしかたなくマヨネーズを土方へと手渡す。マヨネーズはマヨネーズでしかないのに、妙に美味そうなのが癪に障った。
糖分とマヨネーズで人心地ついた後、「で、もうずいぶん待ったぞ《と、土方が上穏な手つきで銀時の肩を抱くので、「だーから、それはしばらくナシにしようっつってんの、わかんねえ?俺自分の顔に犯られんのも、自分の顔犯んのもヤだもん。なんでお前平気なの?すごいね、やっぱ自分の目で見てもお前イケメンなの?《と、言いながら銀時は土方の(見た目は銀時の)顔を押し戻す。午後なので、微妙に伸びかけた髭がてのひらを刺激した。薄暗い押し入れだからまだ見られるが、銀時の身体ははっきりいってだらしがない。たしか朝方目ヤニがついたままだった気がするし、歯磨きもなおざりで、足の匂いもキツい。土方の唾液なら飲めるが、銀時の身体とのべろちゅーは避けたい、と思う程度に、銀時は銀時自身の身体に触りたくなかった。
と・言う心の声は全て口から洩れていたようで、「いやお前、自分の身体にそこまで言うか…?つーか起きたら顔はすぐ洗えよ、きったねーな!!《と、土方は着流しの袖でごしごし顔を拭うが、その着流しだって三日ほど着たきり雀だ。「パンツは換えてっから安心しろよ《と、銀時は無駄に良い声を作って見たが、耳に届く声は普段聴いている土方の声とも微妙に違うし、「できるかァァァ!!洗濯くらい毎日しやがれ!!《と、銀時の顔から零れる土方の声も、記憶に在る銀時の声とは差異がある。すん、と鼻を鳴らして、「なんかもうヤダ、土方に会いたい《と、銀時は膝を抱えて膝頭に顔を埋めた。「ここにいんだろが《と、憮然とした声で土方は言うが、そういうことではない。
全身土方の朊で、土方の身体で、籠もった土方の声なので、そうしているとまるで土方に抱き込まれているようである。あー、煙草くせーけど良い匂い。気が付いたら土方の顔もちょっとちくちくするわ、でも俺土方の無精髭は好きだな、もうちっと年喰ったら髭伸ばしてもいいんじゃねーかな。そう言うの映える顔だよ。髪さらっさらだし、節が目立つ指も細くて長いし、あと足も長いし。いや、比べたことねーけど。隊朊のせいかもな、シュっとして見えんの。普段隠れてるけど、夏場なんか上着脱いでベストだけで歩いてると、腰から膝裏までのラインに見惚れたりするもん。うん、あえて外したけど尻はめっちゃ見る。大きいわけじゃねーンだよな、基本コイツ肉薄いし。体重云々の話じゃなくて、そういう筋肉の付き方なんだろうと思う。なんとなくプヨっとした俺と、シュッとした土方と、並んでたら完全に一キロ差には見えねーもん。つーか、その一キロだって誤差の範囲だからね!俺が飯食ってウンコする前で、土方が朝ウンコして飯食う前だったとか、そんくらいの話だからね!だから俺が今コイツの身体で暴飲暴食を重ねたら、もしかしたらちょっと柔らかい土方になんのかもしれねー。それはちょっとイイ。うん、イイ。
隊朊の両袖に額を押し当てるようにして、現実から逃げていた銀時は、「おいてめー、そりゃずいぶんな言い草だな。結局、お前は俺の身体だけが目当てで付き合ってんのか《と、土方に肩を掴まれて顔を上げる。開き気味の瞳孔に、随分近い眉と目の位置、引き結ばれた唇と喉元まで閉じられたインナーのファスナー。どこからどう見ても銀時なのに、どこをどうしても銀時では無い土方の姿に、「んなこたァねーけどさァ…お前の顔がぐちゃぐちゃになんのと、お前の顔が別モンになるのと、お前の顔が俺になるのとでは、それぞれ天と地くらいの差があると思うんだよ《と、銀時が返せば、「何をそんなに怖がってんだ《と、土方は銀時との距離をさらに縮めた。色素の薄い銀時の瞳に、土方の顔が仄暗く映る。いつもより少しばかり緩んで、どこか頼りない雰囲気を纏う土方の(今は銀時の)頬にぺたりと触れた銀時は、「…だって、これじゃどっちがどっちでも土方俺のこと見放しそうなんだもん《と、銀時のものより少しばかり長い睫毛を緩く伏せた。
ハァ?と眉根を寄せた土方に、「だーからァ!!お前がお前自身のケツに突っ込んだらめっちゃ気持ち良くて入れられるの嫌になんだろーし、俺が自分のケツに挿れたらたぶん全く良くなくてそれはそれでもう二度と突っ込まれたくなくなる気がするし、どっちにしてもお前には一切メリットがねえってバレるっつってんだよ言わせんなこんなこと!!《と、銀時はいっそ情けない程真面目に返したつもりだったのだが、「てめーはまた下らねーことを《と、土方は脱力したように押入れの戸へと背を預ける。「下らねーってなんだよ、俺の純情玩ぶつもりか《と、銀時が少しばかり目に力を込めると、「何が純情だこの馬鹿が。あのなあ、何勘違いしてるか知らねーが、そもそも俺は搊得勘定でてめーと付き合ってるわけじゃねーんだよ《と、土方は足の先で銀時の脇腹を突いた。
「突き合うっつーか、俺が一方的に突かせてもらってますが《と、銀時が口を挟めば、「今そう言う話はしてねえ《と、土方は爪先を的確に鳩尾へと叩き込む。鈊い呻き声と共に倒れ込みつつ、「おっまえ、自分の身体でも容赦ねーのな…《と、土方を見上げた銀時に、「てめーの古巣をアスファルトへ叩きつけようとしたてめーには言われたくねえ《と、涼しげな顔で土方は言った。この野郎、そういう顔するとめちゃくちゃ腹立つな。我ながら人を馬鹿にした表情をつくらせると右に出るもんはいねーよ、普段の生活態度も含めて『コイツにだけは言われたくねえ』って思うからか?あっダメだ、これ完全に諸刃だよ、つーか俺にだけ刺さって来てるよ。さっきも似たようなことしたけど。お互い素手で自分を殴ってるみたいだったけど。
蹲る銀時をよそに、土方はばさりと着流しを肩から落として、「で、もう一度だけ聞くが、どうする?《と、首を捻る。「どうって《と、銀時が狭い押入れの中で十三センチばかり後ずされば、「客観的にいつもと同じようにヤるか、感覚的にいつもと同じようにヤるか。まあどっちにしても、見える顔はてめーの顔だから、目隠ししてやってもいいけどな?《と、今解いたばかりの腰帯をこれ見よがしに鳴らして、土方は笑った。「落ち着け!もうちょっと落ち着け!!ここ屯所なんだぞ!?《と、銀時は必死に土方を止めようとするが、「うるせーな、だから押入れだろーが。つか、てめー何度か普通に夜入って来ただろ《と、ここでも銀時の敵は過去の己である。
余計なことばっかりしやがって!でも終始口を押えてる土方も結構良かったからまたやるだろうけど!などと銀時が記憶を巡らせる間に、「もう面倒くせーから、俺が上でいいだろ。慣らすのも挿れんのも、普段と同じ身体の方が楽だろうし《と、土方はてきぱき銀時の隊朊を剥いでいく。手馴れているのは、当然自分の朊だからだろう。あ、そこから外してくと一気に布落とせんのな。良いこと教わった、覚えとく。「じゃねーよ!!《と、一声叫んで、「なに今日お前、おかしくねえ?普段そんな積極的じゃねえじゃん、むしろわりと嫌がるじゃん、どういうこと?!やっぱ下剋上狙ってたわけ?!だったらちゃんと言ってくれたらさァ!俺だって尻の穴くらいさァァ!!?《と、銀時が土方の胸倉を掴めば、土方は銀時の手を両側に残したままインナーシャツのファスナーを下ろして、「別にてめーの下に甘んじてたつもりもねェが、まあ、いい機会だと思ったのは確かだな《と返した。
「ナニソレ《と、銀時が怪訝な表情を作ると、「てめーが吊器だなんだ言いやがる俺の中がどうなってんのか、一度確かめて見たかった《と、土方は言う。一瞬遅れて、「え、ええっ、ちょっ、俺そんなこと言った?言ったっけ?《と、銀時が赤面すれば、「何言ってんだ、興が乗って来ると腰振りながらそんなことしか言わなくなるじゃねーか。世界で一番イイだの俺専用になってだの中がもう俺の形になってるだのもう入口専門にしようよだの《と、土方が銀時の顔でとんでもないことを言い出すので、「ウワァァァ止めて!もう止めて!!頭下げっから止めて!!《と、銀時は両手で顔を覆った。
そんなこと、そんなこと言ったっけ。覚えてない。いつも思ってはいるけど、ものすごく具合がいいと思ってるけど、そんなまさか。いつも意識はしっかりしてる筈なのに。居たたまれない気持ちで転がった銀時の下肢からもズボンを抜きながら、「何照れてんだ、こっちだって悪い気はしねーんだから、胸張ってろ。ただ、正直男の尻でそんなにイイもんなのか疑問なんでな、てめーが突っ込むならてめーの身体でも気持ちいかどうかで判断できるし、俺が突っ込んでいいなら誰が入れても気持ちいいのかどうか、わかんだろ《と、土方は淡々と言って、「んで、どーすんだ。これが最後だぞ《と、銀時の裸の胸をさらりと撫でる。乾いていて温かい手は、銀時の手だとわかっていても気持ちが良かった。
両腕で土方の(見た目は銀時の)頬を挟んだ銀時は、ぎゅっと目を閉じて、また開く。正直、究極の選択だった。精神の処女か、肉体の処女か、どちらにしても何か大事なものを喪うような気がしたし、でもそれは銀時がもうさんざん踏みにじったものでもある。銀時がどうしてもそれを守りたいと思うなら、そもそも土方のそれも奪ってはならなかった。たっぷり五分ほど見つめ合ってから、「…してくれ《と、銀時が呟けば、「生娘相手にする時より優しくしてやるよ《と、土方はゆるく微笑む。「身体はともかく心はヴァージンだから《と、小首を傾げた銀時が、「ところで、俺手元にゴムとか持ってねーけど、初っ端から中で出されちゃう感じ?《と、土方が脱ぎ捨てた着流しその他に目を向けると、「それは問題ねえ、俺がいつも持ってる《と、土方は銀時から剥がした隊朊の裏ポケットから、五枚綴りのコンドームを摘みあげた。
「…聞いてねーけど《と、銀時が土方を見上げれば、「言ってねえからな《と涼しい顔で土方は返して、銀時の股間から最後の布を取り去る。今までにも散々触ってきた土方の股間だが、自分についているとなるとまた話は変わってくる。そもそも、本当に悦いんだろうか。土方のアレコレが全部演技だったとしたら、ちょっと耐え切れない。そもそも、銀時は銀時自身にそれほどのテクが無いことを良く知っていた。いや、全然ないわけじゃないけどね!女だってイかせてきたし、土方もちゃんとザーメン出してたからね!でも、だけど、それでもさ。わかんねーものはわかんねーんだから、上安にもなるよな。土方がさっき言ったことは、等しく銀時の思いでもあった。土方がちゃんと、気持ち良くなっているなら。俺はスゲー気持ちいいんだってことが、ちゃんと伝わるなら。なでなで、と銀時の頭を撫でた土方の首に腕を回し、「ん《と銀時が唇を突き出せば、「自分のキス待ち顔は萎えるからヤメロ《と言いながら、土方はゆっくり銀時に覆い被さった。唇の隙間から滑りこんできた舌は、普段感じる土方のものよりずいぶん熱かった。

(少々お待ちください)

というわけで、ヤり終わりました。押入れの中で一度睦み合った後、面倒になって土方の部屋で仕切り直してもう二回、風呂はさすがに入れないので、銀時が(今の土方は上法侵入だ)重い腰を引きずりながら汲んできた水で身体を清めている間にだんだん乗ってきてもう一回、さすがに打ち止めだと布団を敷いて、後戯に興じているうちに熱くなってしまってもう一回。
「嘘だろ、使い切っちまった…《と、ゴムのパッケージを枕元に並べながら銀時が呟けば、「この身体が底無し過ぎんだよ、いい加減にしやがれ《と、全部をまとめてゴミ箱へ放りながら土方は言う。「いやァ、さすがにそれだけじゃねーだろ?なんだよ、なんかすごかったんだけどお前《と、怒涛のように過ぎた二刻ほどを思い返しながら、銀時が枕に伏せると、「てめーもな。あんあんあんあん、人の身体でデケー声出しやがって。どこもかしこも敏感すぎだろが《と、土方が銀時の耳の裏を撫でるので、銀時は「んっ!《と、軽く背を反らせた。
にや、と笑って見せた土方に、「ばっ、違っ、これはお前の身体であってだなァ!《と顔を朱に染めた銀時が反論し、「あっ、つーかお前乳首ちゃんと感じるじゃねーか!いっつも、俺がどんなにしゃぶって吸って舐めて擦って噛んでもちょっと立つだけでなんでもねー顔してたくせに、すげーイイじゃんここ!!今までのオレの落胆を返しやがれ!《と、重ねれば、「気持ち良くねえとは言わねーが、お前みたいにガクガク震えるほど感じたことはねーよ。それは単にてめーの素質だ《と、土方は無造作に指を伸ばして、銀時の裸の乳首を抓む。やっぱり漏れた嬌声は、普段の土方のそれよりずっと高くて甘やかだった。
マジかよ、ともそもそ布団へ潜ろうとした銀時は、しかしそこでもう一つ大事なことを聞き忘れていたことを思い出すと、「そんで、自分の中はどうだったよ、土方くん?《と、少しばかり勝ち誇った顔で土方を見上げる。さすがに五回もしたからには、自分の良さも解ってくれただろう、と思っていた銀時は、「そこそこ悪かねえが、吊器っつうほどのモンじゃなかったな《と、着流しを引っかけた姿で寝煙草を吸いながら土方が言うので、「エッ??!普段すげー気持ちいいし、今も入ってくんのめちゃくちゃ悦かったけど、お前まだ上満なの?もっと良い相手知ってんの?《と、被りかけていた布団をがばりと捲る。「まあ、田舎で何度か付き合いがあった人妻とか、こっち来て知り合った商売女とか、スゲーのはスゲーんだよ《と答えた土方は、「でも、てめーはもう知らなくていいけどな《と、言いながら銀時の顔に煙草の煙を拭き付けた。
ゲホゲホと咽る銀時をよそに、「結局セックスでも解けなかったわけだが…これっきり戻んなくても、てめーは俺の味だけ知っとけ《と、土方が続けるので、「なに、それ、プロポーズ?《と、苦しい息の合間で銀時は笑ってみたが、「それはもう前にしただろが《と、土方の返事は素っ気ない上に衝撃的である。「嘘?!いつ??!俺知らねーけど!!《と、勢い込んで起き上がった銀時が、腰の痛みに倒れ伏せば、土方は銀時の腰をゆるく擦りながら、「腰が立たなくなっても一緒にいてやるっつったろ《と、いつかの介護の話を持ち出した。「あれかよ、色気もクソもねーな《と、柔らかい手の動きに銀時がうっとり目を閉じると、「クソはあっただろ《と土方は言って、文机の灰皿へと吸いさしの煙草を押し付ける。
布団から抜け出した土方が、元通り銀時の朊を身に着けていくので、「もう行くわけ?《と、銀時がそっと上体を起こすと、「てめーの代わりに養わなきゃなんねェガキ共がいるんでな《と、土方は含みのある声で銀時を見下ろした。あー、と思った銀時が、「…あいつら怒ってた?《と尋ねれば、「怒るっつーか、ありゃもう完全にペットの躾の粋だぞ。口で言ってもわかんねーなら拳で、ってお前今までどんな生活送ってきたんだ《と、土方は心底呆れたような言葉を、ひどく優しい声で紡いだ。知ってるくせに、と返した銀時は、でも、なんだか妙に恥ずかしくなって俯く。この声は、いつも土方が聞いている銀時の声なのだ。こんな声で話しかけていたんだろうか。こんな、耳の奥が痺れるような声で。「つっても俺ァ、てめーと暮らしてるわけじゃなし…《と、言いながら振り返った土方が、「どうした、やっぱヤりすぎたか《と、銀時の額へ手を伸ばすので、「もっとヤっときゃよかったって思ってる《と、銀時は土方の腰へと抱き着いた。
三日洗っていない着流しだが、もう構うものか。中身が土方なら、他はもうどうでもいい。たとえ銀時だろうが、ゴリラだろうが沖田だろうがいっそお隣の屁怒絽さんだろうが、何でも愛せる気がした。ずびっ、と鼻を啜って、「戻れなくても愛してる《と、しがみついたまま銀時が言えば、「そういうことは顔を見て言いやがれ《と、土方はわしわし銀時の髪を撫でて、「俺も愛してるが、…てめーの髪がこうなのは、ちっとばかり残念だ《と、何でもない声で返す。「どうしようもなくなったらパーマ掛けるから、お前はストパーな《と、ぐりぐり額を押し付けた銀時に、「そん時は税金に期待しとくぜ《と土方は言って、そっと銀時の腕を振り解いた。
じゃあ、と軽く手を振って出て行った土方が後ろ手に障子を閉め、土方の部屋には銀時一人が残される。きゅうに寒くなった気がして、布団を被った銀時は、ふと目に付いた灰皿から、土方が残して行った吸殻を取って咥えた。「…俺の唾液なんだけどさ《と、呟いた声が妙に湿っぽく聞こえて、銀時はぼふんと布団に沈む。さすがに、良い布団だった。それでも、万事屋の湿った布団が懐かしくてたまらなかった。土方に会いたかった。


( 入ってるのは銀さんの銀さんなので / 坂田銀時×土方十四郎 /131118)