14.いちご牛乳

じゅぷっ、ちゅ、ちゅう、じゅっ、じゅるっ、じゅうぅ、と一心不乱で土方のペニスを咥えて舐めしゃぶっていた銀時は、んっ、と短い呻き声と共に土方が吐精したところで顔を上げる。口に土方の精液を含んだまま、布団の横を探った銀時は、用意しておいたコップに土方の精液を吐き出して、そこにいちご牛乳を注いた。やはり添えられていたスプーンでかつかつコップを掻き交ぜた銀時が、そのまま精液入りのいちご牛乳を飲み込む姿を、土方は布団の上から眺めている。
「うまいか?」と尋ねた土方に、「いちご牛乳は万能だからな」と銀時が返すので、「混ぜなきゃ飲めねえようなもんなら吐き出せよ」と、土方は自身の精液の残滓と銀時の唾液で濡れたペニスを見下ろした。「なんで?もったいねーだろ」と、当たり前のような顔で返す銀時は、最初からこうだった。ホテルに雪崩れ込んだ初めての夜から、とうとう引きずり込まれたこの万事屋の布団の上まで、変わらず土方に口淫を施し、そしていちご牛乳に混ぜ込んで飲む。せっかく土方が出したものを、そのまま流してしまうのはもったいない。かと言って、不味いものを飲みたくもない。だからいちご牛乳なのだ、と、初めての夜に銀時は力説した。ココアやカルピスやその他甘味飲料でない理由は、「これが一番うまいから」だと銀時は言うのだが、土方には精液を混ぜ込んで飲み込む趣味が無いので、欠片も理解はできなかった。
しかし、それで銀時とのセックスを止めようとも、銀時の飲精を力づくで止めさせようとも思わなかったのは事実である。飲んでほしいわけではないが、飲みたいと言うのなら拒みはしない。そしてまた、銀時は土方にそれを強要はしなかった。確か三回目の時だったと思うが、口でしてやった土方が、銀時の精液を口に溜めたまま迷っていると、銀時は枕元のティッシュを三枚(二枚ではなく三枚だ)引き抜いて、土方の口元に当ててくれた。
「ぺってしなさい」と言った銀時の口調がいかにも優しかったので、いっそ飲んでやろうか、と土方は思ったが、青臭い液体は吐き気しかもたらさなかったので、銀時の優しさに甘えてしまった。銀時がぐしゃぐしゃ丸めて捨ててしまった銀時の精液の中で、銀時の遺伝子は何億と死に絶えたのだろう。だからと言って、銀時が飲み込む土方の遺伝子が、銀時の中で生きているとも思わないが。
いちご牛乳一杯を、この男にしてはずいぶん時間をかけて飲み下した銀時は、土方の視線に気付くと、「何?お前もする?」と、はっきり形の変わった銀時自身の下着を指す。「しねえよ」と首を振った土方は、それでも銀時の下着を引き下ろして、飛び出たペニスをじっくり眺めた。空気にさらされてふるふる震えるペニスは、少しばかり可愛らしくもある。いつも飄々として掴みどころのない銀時の中で、ここだけは本当に素直だ。
ごしごし、と乱暴に扱いてやると、「いて、ちょっ、もう少し優しくしろって」と銀時は喘ぐ。「喜んでるくせに」と、土方が滲み出てきたカウパーをペニス全体に塗りこめてやると、「痛いのは本当なんだよ」と、銀時はそれでも土方の手を止めない。「なら痛いのが好きなんだろ」と、銀時の尿道口に爪を立てた土方は、びくっと振るえた銀時の身体に、ゆるく唇を歪めた。
「なに、今日はそういう気分なの?」と、銀時の指がぎゅっとシーツを掴んでいるので、土方が無言で銀時の顔を見つめれば、銀時は軽く溜息を吐いてから土方の首に腕を回す。「銀さん、一応ドSなんですけど」と、耳元で囁く銀時に、「俺がMじゃなくて残念だったな」と囁き返した土方は、それからそう間を開けずに射精した銀時の身体を無造作に突き飛ばすと、てのひらの精液をじっと眺めた。
お前今日酷いな、と呟きながら、銀時が差し出したタオルを一応受け取ってから、ぺろり、と銀時の精液を一舐めだけした土方は、「やっぱりな」と言ってごしごし精液を拭きとる。「なんだよやっぱりって」と、首を捻った銀時の顔にタオルを落とした土方は、「うまけりゃいいってもんじゃねえぞ」と、銀時の顔に銀時の精液をぐりぐり擦り付けた。
ろくに抵抗をしなかった銀時が、「あの量でもわかるんでしょうか」と神妙な声を出すので、「マヨネーズに対する俺の愛を舐めんな」と、土方は言う。とたんに、銀時はがばりと起き上がって、土方の身体をぎゅっと抱きしめた。「おい、何スイッチ入れてんだテメー」と、銀時の背を抱き返しながら土方が言うと、「いや、なんか愛を感じて」と、銀時は返す。どうしてそうなる、と眉を顰めた土方に、「だって今の口ぶりだと、お前早い段階で混ぜもんに気付いて、それが何かも大体わかってたんだろ?」と、銀時が続けるので、「飲んだことは無くても、口に含んだことはあるからな」と、土方が答えれば、「なのに、全部食ってくれたんだろ、お前」と、感極まったように銀時の腕の力は強くなった。
はあ、と溜息を吐いた土方は、「勘違いすんな、俺が愛してんのはマヨネーズで、テメーのザーメンじゃねーんだよ」と銀時の髪を引いたものの、「うん、いいよ、マヨネーズの次でも」と銀時はまるでめげない。強いな、と思った土方が、「…俺はいちご牛乳以下なんて御免だが」と、呟けば、「お前が股間に練乳塗らせてくれんなら考える」と銀時が答えるので、「ふざけんな、じゃあテメーにはマヨネーズ塗ったくんぞ」と土方は返したが、それも銀時を喜ばせる結果にしかならなかった。

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事を済ませ、風呂に入ってから万事屋の煎餅布団に銀時と並んで横たわった土方は、「おい」と綿毛のような銀時の髪をかき混ぜる。「んー?」と、眠たげな顔を上げた銀時に、「テメーのザーメンとマヨネーズは比べようもねえが、テメーとマヨネーズなら一考の余地はある」と土方は告げて、目を閉じた。
数瞬の静寂ののち、がばりと布団を履け除けた銀時が、「なにそれ、もう一回!おい!!寝るなよ!!なあ?!」と土方を揺するので、「うるっせえ、黙って寝ろ!」と、土方は銀時の首のあたりに手刀を繰り出す。確実な手応えと共に、銀時が力なく布団に崩れ落ちてくるので、土方は動かない銀時を引き寄せて満足そうに抱きしめた。
万事屋の布団には、銀時の匂いが染みついている。銀時の匂いは散々嗅いだ土方だったが、全身銀時の匂いに包まれて眠るのは初めての経験だった。朝が遠ければ良いと思った。
 


(土方十四郎と坂田銀時 / R18 / 130915)