00.うさぎの処理

うさぎを獲ったら、まず血抜きをする。充分に血が落ちたところで、腹と首と足の付け根に切れ目を入れて、大きく皮を剥ぐ。剥いだ皮は脇に避けておいて、頭と足を斬り落としたら、足の皮もできる限り剥いでしまう。肉の多い部分を残して、足の先は捨てた。次に丸裸の胴体に向き直って、腹を裂いたら、内臓を掻きだす。昔はここも煮て食べていたけど、今は道具が無いので、皮も中身も足の先も頭も、全部まとめて穴に埋めてしまった。道具は古い山刀一本だが、毎日研いでいるので、切れ味はそう悪くない。
そうして残った肉は、枯れ草に堅い石で熾した火の上で炙り、持てる程度の熱さまで覚まして食べる。昔とは味が違うような気がするものの、思い出せる昔はもうほんの少しになってしまった。辛うじて繋ぎとめているのは獣の獲り方と、確実に食べられる野草のいくつか、そして山での水の探し方ぐらいだ。うさぎが採れる日はそう多くない。鳥の次に面倒が少ないので、毎日でも食べたいのに。
食べ終わったら、川まで行って水を飲み、山刀を洗い、比較的平らな石で刃を研ぐ。水で濡らしながら、何度も刃を当てて細かい傷を落とし、ぼろぼろになった手拭いで水気を拭ってから、別のぼろ布できっちり包んだ。竹筒に水を汲んで、歩き出す。昨日来た道とは別の方角へ。どこへ向かっているのは、もうわからなかった。
明日もうさぎが獲れるといい。


(坂田銀時になる前の誰か / 130909)