※574話以降捏造話 ものすごい捏造 性描写を含みますので苦手な方はご注意ください  


現 十 夜 / 第 漆 夜


透き通るように青い初夏の空を、親父の髭のような弓張り型の雲が薄く彩る朝だった。食堂へ続く廊下をぺたぺたと歩くマルコは、視線の先にサッチの後ろ姿を認めて少しばかり眉を顰めた。前々日の宴会の夜、むしろ朝に近いメインマストの見張り台の上で、わりと良い雰囲気になったエースとマルコの間にべろべろになったサッチが乱入して、ついでにサッチが引き連れる隊長格も上ってきて、ぎゅう詰めになった見張り台の縁からマルコは見事に蹴りだされている。甲板まではかなりの距離があったから、マルコは羽根を出して何の問題もなく着地したが、メインマストとシュラウドと梯子に群がる隊長格は無様なマルコを笑うばかりで、心配してくれたのは人の波を掻き分けてようやく顔を出したエースだけだった。「大丈夫か?!」とマルコに声を掛けるエースに、「マルコがこんなもんでなんとかなるわけねえだろ」と簡単に答えたのは当然マルコではなくサッチで、「3時間もふたりきりにしといてやったのに何もねーのかよ!甲斐性なし!!」と叫んだのはもう笑っているのか泣いているのかもわからないハルタで、誰だよいあいつに限界まで飲ませたのは、と、酒癖の悪さを知るマルコは頭を抱える。白ひげ海賊団は、船長である親父があんなふうだから皆それなりに酒が好きだが、好きなのと強いのは別物だということを理解していない人間が多いのも事実だった。マルコは酔ってもあまり顔には出ないし、エースは普段に輪をかけて陽気になるばかりで、それほど害はないのだが、潰れる寸前のハルタとジルと、それから悪乗りしているサッチはひどい。それはもうひどい。「勘弁しろよい」と呟くマルコの前で、エースは見張り台に引きずり込まれて見えなくなってしまう。エースにたいしては甘い隊長どもは、マルコにたいして容赦ないことを良く知るマルコは、落ちたことをこれ幸い、と見張り台に背を向けてさっさと逃げ出した。ばたん、と閉めた扉の向こうで、何やらサッチがマルコを呼ぶ声がしたが、マルコは聞こえないふりをした。保身のために。

とまあそんなことがあったせいで、翌日マルコは眠そうなエースにうらみがましい目を向けられたのだが、それなりに楽しかったらしいエースはマルコを責めることなく、気ままにそここで眠りに落ちては隊員に隅っこに寄せられていた。「いっそ部屋で寝ててくれたらいいんですけどねえ」と苦笑する2番隊の顔には、はっきり「邪魔だから」と書かれていたが、それでもそれを告げることなく重たくてでかいエースを隅に寄せる彼らにはエースへの愛が満ちている。廊下を横切るように眠っていたエースの頭を、何も言わずに覇気で蹴り飛ばして起こしたことがあるマルコにはとても真似できない話である。そして今日になって、前を歩くサッチの話だ。声をかけて乱入してきた恨み言をぶつけるか、エースに余計なことを言った恨み言をぶつけるか、どちらにしようかマルコが悩んでいると、サッチは不意にくるりと振り返ってマルコを認めて、「お、はよ」と笑顔で告げるものだから、「おう、」と答えてしまったマルコは結局恨み言の行き場を失くして、歩調を緩めたサッチに追いついて隣に並ぶ。「朝から何辛気臭い顔してんだよ」と、マルコの顔を覗き込みながらサッチは言って、「お前が何したか良く思い出してみろよい」と無表情にマルコが返せば、サッチはんん?と首を捻ってしばらく考えてから、「悪い、お前にたいしてはしたことが多すぎてどれか良くわかんねえ」と満面の笑みで答えるものだから、マルコはイラッとして高速でサッチの後ろ頭を張り飛ばそうとして、軽くかわされてさらにイラッとした。「そこは避けるなよい」とむっつりした顔でマルコは訴えたが、「いや今の避けねえとむち打ちくらいじゃすまねえだろ」とわりと本気のサッチに言われて、「お前がそんなもんでどうにかなるわけねえだろい」と、マルコがどこかで聞いたような言葉を投げつければ、「ああ、一昨日の事まだ怒ってんのか」とあっさりサッチは頷いて、「がんばって抑えたんだって、すぐ乗り込もうとしたイゾウをビスタに任せて、ハルタの相手は俺がしてさあ、でもほんっとにお前らなんにもねえから、じゃもういいかなって」と明るく言い放つ。あんまりサッチが悪びれないものだから、マルコはハア、と溜息をついて、「もういいよい」と諦めた。ははは、と隣で底抜けに明るい顔で笑うサッチの声が脳に響くような気がして、「そもそもどうして船中に俺とエースの事が広まってるんだよい…」とマルコは横目でサッチを睨んだが、「いや俺は何も言ってねえって、でもまあ、そりゃ、わかるだろ」と至極簡単にサッチが頷くので、マルコは少しばかり肩を落とした。隠す気は微塵もなかったが、公表する気だって欠片もなかったマルコにとっては、先が思いやられるような気がして、どんよりと暗い空気をまとったマルコに、「でも良かったじゃねえか」とッチはぽつりと声をかける。何が、と言いかけたマルコは、サッチの顔が真面目なので口をつぐんだ。「お前ら傍から見てたらただのバカップルな上に、お互い好きあってることも知ってたくせにずっとくっついてねえってわけわかんねえ意地張って、しかも思いっきり死亡フラグまで立てて」とサッチが言ったところで、マルコはいつか疑問に思ったことをもう一度思い出した。マルコは確かに、エースが船を降りるときに思いを告げようとして告げなかった。けれどもそれをしなかった理由は何か、あったはずなのだ。「なんでお前がそれを知ってるんだよい」とだけ言ったマルコの顔をちらりと眺めたサッチは、ふ、とあいまいに笑って、「まあ、それはそれとして晴れてちゃんとしたバカップルになったんだから、もっとガンガン行ったらいいじゃねえか、なあ?」とマルコの肩に腕をかけるものだから、「余計なお世話だよい」と言いながらマルコはサッチの右腕を振り払う。と、振り払ったサッチの手の甲が不自然に濡れているものだから、マルコが思わずサッチの手を握ると、「なんだよ?手繋いで歩きたいのか」と真顔でサッチが尋ねるので、「気色悪いことを言うな」と言ってマルコはサッチの手を離した。サッチの手を濡らす液体が妙に生温かいことと、確かに触ったはずのマルコの左手がまるで濡れていないことに、マルコは少しばかり首を傾げたが、ちょうど辿りついた食堂の中を指して、「タイミング良く開いたぜ」とサッチがマルコを促すので、「急かすなよい」と答えてマルコも食堂の扉を潜った。朝の食堂に、エースはまだいなかった。


そうして夜の事である。一日ほとんどエースとの接触がなかったマルコは、ぐるぐる考えた挙句、エースの部屋の前で10分ほど腕を組んで厚い樫と真鍮の扉を睨みつけていた。マルコは昼番で、エースはまだ隊の仕事に復帰していないので、夕飯を終えてしまえば自然とエースは欠伸をしながら部屋に帰ってしまう。昼日中はあんなにふらふら出歩いているというのに、「だって夜は邪魔だろ?」と良く分からない理由を付けるエースは、何も無い部屋でただ眠るだけなのだ。夕食時に声をかけそびれたマルコが気づいたころには、エースはもう姿を消していて、いやまだ9時前なんだが、と思いつつ部屋に戻ろうとしたマルコは、結局自分の部屋の扉を開けずにエースの部屋の前で佇んでいる。マルコは扉を叩けばいいのだ。寝穢いとはいえ、寝起きが悪いわけではないエースは、ノック一つで音を覚ましてマルコを迎え入れてくれるだろう。ただ、そのあとどうしたいのかをマルコ自身がまだ決めかねていて、がらんとした薄暗い廊下で、そろそろ13分が過ぎようとしていたあんまり情けなくて、だんだんおかしくなってきたマルコが、がりがりと頭を掻いて、今日は諦めるか、とくるりとマルコの部屋に向き直って、 がちゃ、とマルコの部屋の扉を開けたところで、ベッドに不自然なふくらみを見つけてマルコは僅かに目を見開く。白いシーツの下から健康的な色のつま先が覗いて、枕元に散らばる髪は黒髪で、胸のあたりがゆるく上下している。ぱたん、と思わず扉を閉めて、もう一度降り返ったマルコはとんとん、とエースの部屋の扉を叩いた。返事がないことを確認してから、薄く扉を開いたが、エースの部屋はがらんと広いばかりで人の気配もない。ぱたん、と扉を閉めて、またマルコの部屋の前に立ったマルコが、とんとん、と軽く扉を叩けば、しばらくして「…開いてるぜ」とゆるんだエースの声がして、マルコは溜息をつきそうになる。いや俺の部屋だよい、と思いながら扉を開いたマルコの前には、腹を掻きながらベッドに起き上がるエースの姿が目に入って、「何してんだよい」と目を細めながらマルコは尋ねた。すると、「何って、マルコが呼んだんだろ」とエースが首を傾げるので、は?と覚えがないマルコも一緒に首を傾けたら、「え、だってサッチが」とエースが続けるので、マルコは一瞬ですべてを理解する。いや、うん。たぶんこれは感謝したっていいところなんだろうが、それにしてもすべてサッチの手の上で踊っているような気がしてあまりいい気分ではない。「そうかい…」と疲れたような声を出すマルコに、「用はねえのか?じゃあ帰って寝るわ」とあっさりエースがベッドから立ち上がろうとするので、なくはないマルコは「待て待て待て」とエースを押し留めて、ベッドの端に腰を下ろした。素直に「待て」をするエースは、シーツに片足を突っ込む形で、マルコの言葉を待っている。よし、と思ったマルコは、そこから先に事を進めようとして、そう言えばマルコからしようと言ったことがほとんどないことに気がついて少しばかり愕然とした。いつもきっかけはエースが作るか、雰囲気に流されて何も言わずに始めていたマルコは、今さらながら頭を抱えたくなって、どの口を下げて愛してるって言ったんだよい、 と過去のマルコを燃やしたくなったが、あいにく不死鳥の炎は生身を燃やしてはくれない。悶々とするマルコの前で、エースの瞼が塞がりかけていることに気づいたマルコは、はっとしてとりあえずエースの腕を握る。ぱちっ、と目を見開いたエースは、「ちょっと寝てた」と照れたように笑って、笑い顔に逡巡を飛ばしたマルコは、おおきく息を吐いてから「エース」とエースの名前を呼んだ。マルコが、「何だよ」と答えたエースの腕を引いて、好き放題絡まる割に指通りの良い髪に手をかけて顔を引き寄せれば、エースは何も言わずに目を閉じるので、マルコもゆるりと瞼を閉じて、十分近づいたエースの唇に、マルコのそれを重ねる。軽く触れたところで、エースが吐息だけでまた笑うので、マルコは漏れた呼吸さえ飲み込むように口を開いて、エースの唇を舌でなぞって、素直に開いた歯列からぬるりと咥内に舌を差し入れた。

動かないエースの舌を軽く舐めたところで、ひとまずマルコが顔を上げれば、エースも薄く目を開いて、「用って、これかよ」と囁くように言った。「本当は黙って夜這い掛けるつもりだったんだがな」としれっとマルコが答えれば、「へえ」とエースは感心したように目を眇めて、「じゃ、」と言いかけるので、マルコはエースの口を開いた左手で塞ぐ。むぐ、とここは男でも柔らかい唇がマルコの掌をなぞって、それだけで反応しそうになったが、マルコは冷静さを装って、「セックスしていいか」とエースより先に口に出した。する、とエースの口を覆っていたマルコが掌を離せば、エースは幾分笑いだしそうな顔で「いいよ」と答えた。「何笑ってんだよい」と、マルコが緩みかけたエースの唇の端を抓むと、エースは「だって今さらすぎてな」と、とうとう笑い出しながらエースは答える。まあたしかに。断られるのが怖くて誘うことも出来ずに押し倒していたマルコには返す言葉もないが、しかしエースは「笑いすぎて涙でそう」と言って眦を拭いながら、マルコの背中に手を廻した。「いいよってずっと言ってただろ、俺は」とあやすような声でエースが言うものだから、いつかと同じように泣きそうになったマルコは、少しばかり乱暴にエースの首を仰向かせて、もう一度口付ける。今度は最初から口を開いていたエースは、ぬるぬる動くマルコの舌に合わせてぬるぬる舌を絡ませて、合間に息継ぎを繰り返す。脳がしびれるくらい気持ちが良くて、マルコが息継ぎの合間にやわやわとエースの腕を揉むと、エースは器用に手首を返してマルコの指にエースの指を重ねた。ごく自然に。エースの指をぎゅう、と握りしめたマルコは、最後にちゅう、ときつくエースの唇を吸って、エースの粘膜から舌を引き抜くと、触れそうな近さを保って、顎から首筋、首の付け根から肩口を舐めて、くっきりと浮かぶ鎖骨の上を痕が残らない程度にきつく吸い上げて、胸の上で少しばかり立ち止まる。動きを止めたマルコに、エースが何か言いたげにマルコの指を握り返すので、「良かったな、と思ってよい」とマルコが口を開けば、「何が?」とエースが問い返すので、マルコは上目遣いでエースをちらりと眺めて、それから「ここは無事で」と、ぺろりとエースの乳首を舐め上げた。瞬間、マルコと繋いだエースの左手がぼっと炎を上げて、「悪ィ!」とエースは短く叫んで能力を抑える。寝屋で燃やされかけたのは初めてで、マルコがまたエースの顔を見上げれば、エースの顔はエースの炎に負けないくらい赤くなっていて、思わずマルコも燃えかけた。「その顔は反則だよい」と、肩を落としたマルコがエースの首筋に顔を埋めれば、「マルコこそほんっとどうでもいいこと言うよな!っつうかそういうこと言うなよな!」と耳元で喚くエースの声がして、「せっかく開発したのに無くなったら悲しいだろい」と真顔でマルコは答える。マルコはわりと本気だったが、さらに体温を上げたエースが、「もう部屋ごと全部燃やす…」と呟くので、それ以上言うのは止めて、「せめて一回終わるまでは止めてくれ」と、100度近いエースの指を持ち上げて口付けた。不死鳥は、こういうとき便利でいい。

はあ、と、赤い顔のまま息を吐いたエースは、「もっと前みたいに、さらっとしたらいいだろ、さらっと」とマルコの顔から目を反らすので、「照れるなよい」と、先ほどとは逆の乳首をちゅ、と吸い上げた。ん、とエースの喉もとで押し殺すような声が聞こえたが、構わずに舐めて、少しばかり噛んで、捏ねるように押しつぶせば、やがて確かな反応を示すので、身体は正直だよい、と安いエロ本のような台詞を脳内で再生したマルコは、余計なことは言わずにエースの脇腹に移動して、また少しずつ吸ったり舐めたり噛んだりしながらエースのエースに近づいていく。ん、ん、ん、とその度にくぐもった声を上げていたエースは、マルコがエースの臍下までたどり着いたところで不意にがばりと上体を起こして、「マルコお前、咥えんなよ?」と相変わらず赤い顔でマルコを捉えた。今まさに、片手でホックをはずしてファスナーを降ろしてエースのエースにもキスしようとしていたマルコは、「なんでだよい」と僅かに反応するエースの股間をするりと撫でて尋ねた。途端にビク、と身体を震わせたエースは、一度シーツに視線を落として、ちら、と横目でマルコを眺めるようにしてから、「だ、ってマルコ、一度咥えたら出るまで離さねえだろ」と言うので、「お前もそうだろい」と何度か飲まれたことのあるマルコがもっともなことを言い返すと、「そうなんだけど、・・・・・・いや、でも今日は、いいっていうか」とエースはまたシーツに目を向けて、そのはっきりしない態度に「今日は、ってなんだよい」とマルコが首を傾げれば、「…っだああ、からっ、久しぶりなんだから、お前のチンコ突っ込まれて最初にイきてえって言ってんだよ俺は!!」とエースは叫んで、繋いでいた指を離してマルコの首を絞める勢いでマルコのシャツの襟首を掴んで、マルコの首に吸いついた。ちゅうう、とかなりきつく吸ってから唇を離したエースは、「やっぱすぐ消えるな」とマルコの耳元で軽く舌打ちをして、それから「わかったか?」とマルコの目を覗き込むので、マルコはこくこくと頷く。乳首云々以前に、エースの方が男前だった。少し方向性が違う気もするが。

気を取り直して、マルコが寝転がるエースのハーフパンツに手をかけると、エースは腰を浮かせて半分方自分で下穿きを脱いだ。まあいいんだが、と思いながらマルコがベッドの下の定位置をごそごそ探って、半分ほど空になったローションを取り出すと、エースは薄く目を凝らして、「…そんなに減ってたか」と尋ねるので、「良く覚えてねえが、半年使ってねえから蒸発したのかもな」とマルコは返す。「へえ、」と呟いたエースの声に含みがあるので、蓋を開けて掌にローションを受け止めて温めながら、「何が言いいてえんだよい」とマルコが返せば、「使ってねえんだ、と思って」と答えるエースはずいぶん楽しそうだ。こいつ、と思ったマルコが、「使ってなけりゃどうなんだよい」と、ローションを垂らしながらマルコが尋ねれば、エースは軽く身じろいでから「嬉しいよ」と笑顔で答えた。あんまり無邪気な顔で笑うものだから、マルコは少しばかり動揺してエースの腹にローションをかけてしまって、「つめて、」と言ったエースに「ああ」と返して、なぜかエースの腹にぬるぬるとローションを塗りつける。マルコの指がエースの脇腹や臍を掠めるたびに、びく、とエースは身体を揺らして、「え?…え、ひ、ぇっ?」っと、状況をうまく掴めないらしく、あえぎ声とも疑問ともつかない声が漏れた。それマルコも同じだったが。そうこうしているうちに、「や、…あの、もうそろそろ、」とエースから泣きが入ったので、マルコはどうにか動揺を抑えて、ボトルからローションを追加して、下腹部から陰部を伝って、エースの尻穴まで指を進める。ぬる、と少しばかり膨らむ箇所にローションを塗りつけると、エースの足がひくりと痙攣してエースの脇腹を摩る。構わずにぬるぬると指を動かして、つぷりと人差し指を埋め込めば、ふ、と息を飲む音が聞こえて、マルコは目眩がしそうだった。

エースを燃やし続けている間、エースが死んだ後の事ばかり考えていたマルコは、エースと二度とセックスができなくてもいいような気がしていたというのに、いざはじめてしまえばエースの悦いところばかり思い出してしまう。ぐく、と唾液を呑み込んだマルコは、指を埋めたまま身体を倒して、エースがしたようにエースの首筋に顔を寄せる。ちゅう、と痕が残るほど強く吸い上げようとすれば、マルコの口の中でエースの赤い炎が揺らめいて、舌を焼かれる感触にじわりとマルコの背筋に悪寒が走った。焼かれる端からマルコの舌も蒼く燃え上がるものだから、エースの首筋には紫色の炎が灯って、それはまるでいのちのようだった。そろそろ我慢できなくなったマルコは、エースが平気そうなのでローションと指をもう二本追加して、きゅうきゅう締めつけるエースの入り口を少しばかり乱暴に押し広げる。傷つけようとすれば燃え上がるエースの尻穴はどうしようもなく熱くて、とろとろ融けるローションはエースの粘膜と混じり合っていく。頃合いを見計らって指を引き抜くと、「ふあ、っあ、」とエースの口からようやく色気のある喘ぎ声が飛び出して、マルコは褒めるように、滑る指でエースの頬をぬるりと撫でた。目を開けたままのエースが、「…あちいな」とまだ掠れない声で呟くので、「もっと熱くなるよい」とマルコは薄く笑って、下穿きの前を寛げる。エースを傷つけないように、適当にマルコ自身のペニスにもローションを垂らしたが、マルコのマルコはすでに痛いほど勃ち上って少しばかり濡れていたから、あまり必要なかったかもしれない。エースの尻穴にマルコのペニスを教えてると、きゅう、とエースの尻穴がひくついて、マルコはひゅ、と息を吸い込む。そのまま押し込んでしまいたいところをぐっと堪えて、「挿入れていいか」とエースの耳元でマルコが囁けば、エースは余計なことを言わずにこくり、と頷いた。

エースの目の縁に薄く水滴が溜まっていることに気づいたマルコは、ぐ、と腰を進めながら身体を倒して、エースの眼球をぺろりと舐め上げる。生温かくてしょっぱいそれは、基本的にエースの身体や精液と同じ味で、マルコは少しばかり味わって飲み込んだ。エースの尻穴はマルコのペニスを半分ほど飲みこんだところで動きを止めて、マルコのマルコをぎゅう、と締め上げるので、マルコは眉根を潜めて射精感に堪える。この体制はわりと苦しかったが、もう大幅に動く気にもならなかったので、「少し我慢しろよい」とエースに声をかけてから、マルコはエースの右太ももに手をかけて、ぐ、と反らせてから左肩に担ぎあげた。え、と言う顔をしたエースは、それでも身体が柔らかいので大した抵抗もせずに大股を開いて、マルコはすきを突くように根元までペニスを埋め込んだ。乾いた音が漏れて、「っあ、」とエースは悲鳴にも似た声を上げたが、声には確かに歓喜の色が混じっているので、マルコは構わずマルコのペニスをぎりぎりまで引き抜いて、またエースの最奥まで叩きつける。ピストンを繰り返すたびに聞こえていたエースの声が一瞬途切れるので、マルコがエースの顔に目を移せば、エースはぎゅう、と唇を噛みしめて、それでも目は大きくひらいいたまま耐えているので、たまらなくなったマルコはエースの腰が浮くほど深く身体を倒して、噛みしめられたエースの唇をこじ開けてマルコの舌を螺じ込んだ。「噛みたけりゃ、噛め」と、マルコの目しか映らないほどの至近距離でマルコが囁けば、エースはさらに大きく目を見開いて、ゆるく首を振る。できない。いくらでも治る不死鳥の身体を気づかうエースが愛しくて、ぺろり、とエースの咥内をなぞったマルコがさらに腰を動かせば、ぐにゃ、とゆがんだ視界の中でエースは一際大きく嬌声を上げて、マルコとエースの腹に白濁を吐きだした。一瞬遅れて、マルコが叩きつけるようにエースの中に射精すると、エースの身体がびくんと跳ねて、マルコの首に回っていたエースの腕がぎゅう、とマルコを抱きしめる。何度か痙攣するエースの尻穴が落ち着くのを待って、するり、とマルコがエースの口から舌を抜くと、飲み込めなかった唾液がエースの頬を伝ってシーツに転々と染みを残した。エースに体重をかけないように、マルコがそろそろと起き上がる間も、角度を変えるペニスにエースは何度か身体を震わせて、ずるり、とマルコの肩から落ちた腕で口を塞いでいる。はあ、と荒い息を吐くエースの下半身は、ローションと精液でひどいことになっていて、胸のガーゼの端にまで飛んだ精液を掬いながら、もう一度してえな、とマルコは思った。思ったところで、「マルコ」とエースが潤んだ声でマルコを呼ぶので、「何だよい」とマルコが返せば、

「今日はもう、ずっとしよう」

と、エースは言って、片肘をついて上体を起こして、ちゅ、とマルコに口付ける。そして触れたまま、「な?」とエースが囁くので、ああまったくどうしようもねえよい、と、エースの中でまた大きくなったマルコを鑑みて、マルコはエースの右足を抱え直した。つ、とまだ濡れたままの指で内股をなぞりながら、「途中で寝るのはやめろよい」とマルコがわざと突き放すように言えば、「マルコこそ、先に空になるなよ」と挑戦的にエースも笑う。掠れたエースの声が耳に心地よくて、マルコはまたエースの首を舐め上げた。もうぐちゃぐちゃになったシーツには、エースの唾液と、マルコの精液とローションと、それからふたりの涙が一晩で滲み込むことになった。風のない夜だった。

( はじめての正常位 そしてある意味初夜なわけで / マルコ×エース(とサッチ) / ONEPIECE )