あ と 一 秒



「エースはおれのことすきなのか?」

エースがルフィを仰向けにして、シャツを脱がせて、腰というか足というか股のあたりに圧し掛かって、自分の上着に手をかけたところで、ルフィが言った。シャツを捲りあげた形でエースの動きが止まる。顔が半分隠れて、乳首が片方だけ見えている。妙な恰好のまま、エースは少しだけ視線をさまよわせて、それから首を横に傾けた。右斜め45度。いわゆる「?」の角度だ。えーと、と何か言いたげなエースに向かって、「じゃあ嫌いなのか」とルフィは言った。脱ぎかけのエースは、今度こそはっきり首を横に振って、「いや好きだけど」と、そこは否定した。煮え切らない言葉で。

「だけど、なんだ?」と言ったルフィの目をまっすぐ見て、「なんでこの状況でそれを聞くのかと思って」とエースは答えた。「今わりといい雰囲気だっただろ?」と言われて、ルフィは「うん」と頷いた。「いつもそんなこと聞かないでやってるだろ」と言うエースの言葉にも「うん」と頷いて、頷いてから、「でも今日は聞いてみようと思ったんだ」とルフィは返した。「なんで?」と言ったエースに、「聞きたかったからだ」と言うルフィの答えは明確だが埒が明かない。うーん、と唸ったエースに向かって、「エースは俺がすきだからセックスするのか?って聞いたほうがわかりやすいか」とルフィは言った。「まあそのほうがわかりやすいな」と、止めていた手を動かして完全にシャツを脱いだエースは頷いた。「そっか。じゃあ答えてくれ」と、裸の胸をさらしながら、裸の胸をさらすエースに向かってルフィは答えを促した。んーーー、と、さして考える様子もなく唸ったエースは、「違う?と思う?」と、どうでも良さそうな顔で答えた。そして、「じゃあ続きするぞ」とルフィの下半身に手をかけようとしたエースを止めて、「すきだからしたんじゃねえの?」と重ねてルフィは聞いた。わりと真剣な眼をしているルフィにを見て、エースは今度も特に考えるようすもないまま、「俺がお前を好きなのと、俺がお前とセックスするのは別の話だ」とあっさり言った。「別なのか」と繰り返したルフィに、「別なんだ」とエースは頷いた。「だから続きを」とルフィの手を払おうとしたエースを押し留めて、「じゃあなんでエースはおれとえろいことするんだ」とルフィは言った。「散々した後で、そういうこと聞くか?」と言ったエースに、「知りたくなったのは今日だ」と、堂々とルフィは答えた。「今日気づいたのか…じゃあ仕方ないか」と言ったエースに、「仕方ないだろ?」とルフィは笑った。笑ったルフィの顔を見ながら、エースは少しだけ考えて、少しだけバツの悪そうな顔で、「えーと…目の前に、いたから…?」と言った。エースの答えを聞いて、「なんか最低の答えだな」と言ったルフィに、「そうだよなあ」と他人事のように笑ったエースは、「ところで」と言った。「ルフィはなんで俺とセックスするんだ」とエースに尋ねられたルフィは、「エースがすきで、エースとするえろいことが気持ちいいからだ」とすっぱり答えた。「それは俺が好きだってのも条件に入るのか」とエースが聞くので、「嫌いだったらしねえよ」とルフィはまたきっぱりと言った。「エースは嫌いな奴とえろいことして楽しいのか?」と言うルフィに、「まあ…楽しくない…こともないけどな」とエースはほりほりと頬を掻いていった。「理解できねー」と言ったルフィの額を一つ弾いて、「そりゃあお前がガキだからだ」とエースは笑った。

「で、結局エースはおれがすきじゃなくてもえろいことができて、でもおれのことはすきだってことでいいか」とルフィが言うので、エースは「そういうことだ」と頷いた。そして、「ルフィは俺のことが好きで、俺とするセックスも好きってことでいいんだな?」とエースが尋ね返すので、ルフィも「そういうことだ」と頷いた。「ん、じゃあ満足したから、続きしてくれ」と言ったルフィには答えずに、エースはしばらくルフィの裸の胸を見下ろしていた。「なんだよ、しねえのか?」と重ねたルフィの声を、「なあ」と言うエースの声が追いかける。「なんだ?」と首を傾げたルフィに、「ルフィは俺と恋人?とか、そういうのに、なりたいか?」とエースは問いかけた。一瞬も間も開けずに、「なりたくねえ。俺はエースの弟だ」とルフィが答えるので、エースはゆっくり笑って、「俺もルフィの兄貴でいてえよ」と言った。

結局今日はセックスしなかった。
( エースとルフィ腹違いですらなかったよ記念 / 56巻 / エースとルフィ / ONEPIECE )