POLARIS

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「北極星?」

夕食が終わったあと、小平太に攫われた。
攫われたと言うか、まあいきなり背後から飛びつかれて裏山へ行こう!と腕を引かれたというか、つまりはそういうことだ。
いや俺は鍛錬がと言いかけたが、普段はともかくいけいけどんどん!と叫ぶこいつを止められる奴はそうはいない。俺も止められない。
引きずられるようにしてやってきたのは裏山の頂上。やはり引きずられるように地面に腰を下ろして、押し倒されるように地面に横になる。
何しに来たんだと思う俺をよそに小平太は笑顔全開で空を見ている。

「おい」

声をかける。小平太は気付かない。
イラっとして、次は声を張り上げる。

「おい!」
「ん?なに文次」

何じゃねえよ、つうかそれはこっちの台詞だよと思いながら理由を問うた。
すると小平太はえーえへへ、と笑いながら

「北極星を見よう!」

と言った。
そして冒頭に戻るわけだ。

北極星?なんで?
は?と言う思いが顔にも表れたのだろう、小平太はきょとんとして口を開く。

「何?文次知らないの?柄杓星の先を辿っていくとね、」
「いやそれは知ってるけどよ」

天の上で動く事のない 北を指す星
忍者としては知っていて当然の、

「俺が聞きたいのはなんで俺がお前と二人でこんな場所でそれを見なきゃいけねえのかって言うこと」

そう言うと、小平太は隣で大きく溜め息を吐いた。
なんだよ。いいたいことがあるならはっきりいえよ。

「…文次郎って絶対B型だよねー」
「なんなんだよその根拠のない確信は!」
「だってデリカシーないしすぐ怒るし ていうか実際B型だし」
「デリカシー云々はお前にだけは言われたくねえよ!」
「でも私はB型じゃないし」
「O型だろ、知ってるよ」
「えー?なんで?」
「なんでってお前昔大声で俺に教えてきたじゃねえか、身長体重から血液型から誕生日から何から」
「そうだっけ?」
「忘れてんじゃねえよ!」
「あはは、文次が覚えててくれればそれでいいじゃん」
「…まあ…」

良くはないだろう自分の言ったことには責任を持て!と言おうとしたが、小平太が嬉しそうにしているならばそれでいいかと思う。
思うようになってしまった。

「それにしてもさあ」
「なんだ」
「まんまなんだねえ、私たち」

騒がしくて能天気なO型の私とすぐ怒ってデリカシーがなくてアレなかんじなB型の文次。

「お前それはどう考えても偏見だしそれを差し引いて考えても酷い言い草なんじゃねえか」
「そうだねえB型の人が皆文次みたいなわけじゃないしねえ」

それはどういう意味だとかその台詞は熨斗つけててめえに返してやるとか、いろいろ言いたい事は浮かんだが正論ではあるのでうるせえよというだけに留めておく。

「…つうか北極星を見るんだろ」
「うん?ああそうだった」

なんか楽しくなって忘れてたよ。
にこにこしながら言う姿に少しイラっとしたけれど、やっぱり小平太が嬉しそうなのでそれでも良いかと思ってしまう。今日はもうこれで二度目だ。相当重症なんだろう。

「あのねえ」
「なんだ」
「北極星は文次なの」
「は?」
「私の中で」
「…はあ」

何を言い出すんだ、ていうか何が言いたいんだ。
いつも以上に言葉足らずな小平太を見つめる。
…と、いつもよりずっと控えめな、けれどもいつよりずっと幸せそうな小平太の顔が目に入って何も言えなくなった。

「動かないでしょ、あれは」

春でも夏でも冬でもずっとあそこにいる。同じ場所にいる。
でね、文次も私の中でずっと同じ場所にいるの。
おんなじだなあって。

思案しながら言葉を繋げる様子にやはり何も言えなかった。

「だから、それでね、ええと、・・・とにかくそう思ったらなんだか凄く嬉しくなって文次と一緒に見たいと思ったの」

そう思ったんだよ。
それはもう幸せそうに。笑う姿に。なぜだか胸が痛くなった。

「…それだけでお前は人を攫ってくるのか」
「うん?…うーん、」

やっとのことで絞り出した言葉は、いつも通りの憎まれ口で。
ああこんな事が言いたいわけではないのに。
でも何を言っていいか分からない。何を言えばいいかわからない。

「文次」
「なんだ」
「迷惑だった?」
「…」
「ごめんね?」
「なんで疑問系なんだよ」
「だって文次答えてくれない」
「…まあ、」
「うん?」
「今さらだから別に謝る事はねえ」
「うん」
「でも次からはちゃんと説明しろ。一人で突っ走んな」
「うん」
「あと恥かしいからできればそういう事は自分の中だけで完結させとけ」
「えー、それは嫌。私文次になんでも言いたい」
「時と場合と内容を選べ!」
「努力はする!」

ぎゃあぎゃあと叫びながら寝転がる二人の上には満点の星空が広がっていた

END.


小平太の一人称が「私」なのが物凄いツボにはまったのと潮江文次郎が愛しすぎて書いたもの。こへもん?もんこへ?どっちでもいい
小平太がただのアホだ・・・文次郎が乙女だ・・・(逆もまた然り)
なんかいろいろすいません。すいません。


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