[ 葬送インソムニア ]



「お前ばっかり見てきた気がする」

(まるで)

「銀河鉄道の夜、ってしってるか?」
「教科書に載ってたな」
「ああそういえば…さわりの部分だけだったけどな」
「それが?」
「うん?お前との関係について考えていたらいまちょっとそれを思い出して」 

それ のジョバンニがカンパネルラをみるような目で 俺はお前を見ているのかも
最初はどっちも同じだけのものを持っていたんだ 二人は対等の関係だった
だけどいつのまにかジョバンニはなくしてしまう 彼のせいではないのに
そしていつのまにかジョバンニはカンパネルラから哀れまれる 存在に?

「ちょっと違うな…」
「何が?」
「うん?…うん」

違う。はっきり違う
カンパネルラはジョバンニを哀れんだりはしなかった
同じように

(秀吾は俺を哀れんだりはしない)

いっそそうしてくれればいいのに
そうすればお前を恨む事もできるのに と

「ジョバンニも思ったりしたかな」
「???」

独り言のような俺の言葉にすら律儀に反応してくれるお前を恨む事なんてできやしない
妬んでも僻んでもそれでも

(それでもずっといっしょにいたから)

「お前と銀河鉄道に乗ったら消えるのはどっちかなー」

秀吾のほうがいい奴だけれど俺の方が偽善者だから水に飛び込むのは俺のほうだろうなあ
うんでもそれがいい。

「俊?」
「お前が消えるよりは俺が消える方がずっといい」

お前が俺の視界から消える前に俺がお前の前から消えたいよ

「よく分からんけど俺はおまえが消えたら悲しいぞ?」
「知ってるよ」

しってる。お前が俺の中にいるのと同じくらいお前の中にも俺がいるということ
だけど俺の抱いている感情とは全く別のものであるということ
ちゃんと知ってる。

「だから消えたいんだ」

お前が俺の中にいたくらいの時間は
俺をお前の中に残していくための努力は惜しまないさ

(空に開いた穴に落ちるくらいの覚悟はあるということ)


(門脇と瑞垣。銀河鉄道の深夜 / meisai_logic)